日本の革加工職人の技から生まれた「hmny」「CORGA」

 

上質で洗練された革製品のブランド「hmny」と「CORGA」。国内屈指の革製品産地、香川県東かがわ市の職人たちによって丁寧に仕上げられた製品は、ユニセックスなデザインが個性的。アッシュコンセプトとルボアのデザインプロジェクトは今年10年目を迎えました。

 

スタートは「JAPANブランド」プロジェクト

アッシュコンセプトが革製品メーカーのルボアとつくり上げた「hmny(エイチエムエヌワイ)」と『CROGA(コルガ)」は、もう10年続くブランドになったんですね。

DSC_0046アッシュコンセプト代表
デザインディレクター 名児耶秀美

最初は、経済産業省が主導する「JAPANブランド育成支援事業」に僕が呼ばれたのがきっかけでした。東かがわ市はもともと手袋の産地として有名ですが、現在も中国製を含めて日本で販売される90%のシェアを占めています。

そこで、もっと全国で広く知ってもらい、多くの人に愛着をもってもらおうということでJAPANブランドのプロジェクトに参加したんですよ。

ただ、当時は半年ほどしか実働時間がなくて。おもしろくなるのは分かっていたのでぜひ時間をかけたいけど、「半年では商品まで完成させるのは難しいですよ」って話してね。「作品でよかったらデザインを一緒に考えます」とスタートさせました。


その成果発表は、新宿のリビングデザインセンターOZONEで行なわれましたよね。手袋の椅子や、ランプシェードなど遊び心たっぷりなものをたくさん見た記憶があります。

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KONCENT蔵前本店 SOL’S COFFEE

そう。デザインを監修したのは、僕以外にアッシュコンセプトのスタッフ2名とデザイナーの廣田尚子さんでした。

すごく評判良くて、特に喜んでくれたのは職人さんたちでした。デザイナーが簡単な図面を描いて渡したときには、「できないよ」と突っぱねられてしまうんだけど諦めずに、工場でこんな技法を見たからどうにかならないか、と具体的に相談すると「できるかも」と一緒に考えてくれるようになってね。打ち合わせの翌朝、さっそく試作を作ってもってきた職人さんもいました。

優れた技術を持っているのに手袋以外で活かしたことがなかったから、彼らにとっても新鮮な体験になっていたら嬉しいよね。商工会議所が中心になって新しいものづくりの道が開けそうになったんだけど、前例がないと、なかなかうまくいかないもので‥‥‥独立したメーカーをいくつもまとめる事業には結びつかずにいたんです。

そのときに、プロジェクトメンバーの1社だったルボアが「自分の会社で実現したい」と名乗りを上げてくれたんだよね。

そこから、アッシュコンセプトとルボアの新ブランド立ち上げにつながったのですね。以前とは違うデザイナーを起用したのはなぜでしょうか。

もし同じメンバーで続けると、JAPANブランドのスキームをそのままルボアが受け継いだような形になってしまうでしょ。全く違うプロジェクトにしたいという気持ちが強かったからね。

というのも、ルボアは当時、手袋から革小物の製造にシフトチェンジしていた頃でした。にもかかわらず、商品は革の財布に動物の顔がプリントされているような、まるで“お土産物”のようなものばかり。

訳を聞くと「問屋の人がプリントものは流行っているから、って言うんで‥‥‥」と。

そこで直感的にひらめいたのは、ルボアの林社長も一緒に考えてもらうプロジェクトにしよう、ということでした。革小物は女性向け商品が主軸になると予測できましたが、林社長を中心に僕らが作るならまず男性が持つ革小物にしてみようと考えました。

ただ、それだと絞り込みすぎるので、少し男性寄りなユニセックスを目指すことにして。少なくとも、林社長が気に入って自分がまず持っていたいと思う商品をつくらなければ意味がないからね。使う人を想いながらものづくりをする、という感覚を体で理解してもらいたい気持ちもありました。



「hmny」はメンバーの頭文字


logo_hmny

東かがわ市全体ではなくルボア1社とがっちり組むデザインプロジェクトが始まったわけですが、デザイナーには私の恩師でもある故・宮城壮太郎さんが加わったのは、名児耶さんのご希望ですね?

その頃たまたま四国で別の仕事があり、宮城さんも一緒に革工場の見学をしていたタイミングでもあり、デザインをお願いしました。林社長と僕と宮城さんがユーザー代表となって、本当に使いたいものをつくろうという熱意は共有していたと思います。

ブランド名「hmny」は、すでに決めていたのですか?

つくり手である林社長の「h」、デザイナー宮城壮太郎さんの「m」、プロデューサーである名児耶の「n」。最後の「y」は「you」、つまり使い手である「あなた」のこと。縫製のステッチをイメージして、使い手と作り手が結ばれているようにデザインしたロゴも決まりました。

1本でつながっている、一筆書きのようなロゴですね。

現在、ルボアのベーシックタイプと呼ばれるアイテムが初代のもので、財布やキーホルダーなどの服飾小物に限らず、スリッパやペントレーなど生活で使うものも多くデザインされています。

ルボアでは従来、「革小物=お財布、小銭入れ」といった概念だったんだけど、hmnyでは生活の中に革がある風景を中心に考えました。インテリア小物も含め、現代の生活にフィットするようにパソコン周辺のアイテムを揃えるのはブランド立ち上げ当初からの考えです。

男性が使う暮らしの革小物ですね。かっちりした縫製が特徴で、清潔感あるデザインだと思います。

_イメージ全体

_イメージ机上

宮城さんがデザインで大切にしていたのは、シワになる部分でした。革って動物の皮膚でしょ? だから使い続けるうちに何度も折れる部分はシワが寄っていきます。そのシワがなるべく出ないように、折れ曲がる部分にはストライプをいれよう、という工夫をしています。

他にも、ポケット部分は直線だと出し入れしづらいから、角をちょっと斜めにカットする、というのもひとつのデザインパターンです。

機能的な部分を逆にデザイン的に見せたり、逆にウィークポイントになりそうな部分をグラフィカルに処理して使いやすさを導いたり‥‥‥宮城さんの発想はさすがだな、と今でも誇りにしています。

ベーシックでありながら、すべてが誠実な形です。
宮城さんがこんなにも早くお亡くなりになったのが残念でなりません。

僕の中では宮城さんの後、ルボアを受け継ぐデザイナーは考えられなかった。だから宮城さんの心をわかっている僕と林社長で継続していこうということに決めました。
宮城さんが残したベーシックタイプと重複するアイテムはもう必要ないし、本当の意味で典型的なのでいつの時代にも合うデザインだから、もし将来的にサイズや仕様の見直しが必要になった時には手を加える可能性もあるけど、これからも大切に残しながら、新しいラインを作ろうと考えました。

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それがhmnyカジュアルタイプです。革を生活の中に、という発想とはまた違い、若い人が気軽に使える革小物というコンセプト。革製品はどうしても高価になるからなかなか身につけられないことも多いけど、だからといってナイロン製品ばかりを選ぶのではなく、日常的に使ってもらえるように考えました。

カジュアルラインの試作は宮城さんもご覧になっていましたよね。闘病中のベッドでデザインを監修したと‥‥‥。

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プレーンなケースが最初の商品です。革の表面にできるキズがなるべく目立たないようにシワ加工をすることで、気軽に使えるようになるし、キズが原因で捨ててしまう部分も減るので結果的に価格を抑えることもできるものになった。

宮城さんが、袋の内側が黒いと中身が見づらくなってしまうので「シルバーなんてどう?」と言っていたのを覚えていたので、シルバーを貼ることにして、ファスナー部分は少しだけ側面まで伸ばすことで、出し入れもしやすくね。
形になってすぐさま宮城さんのところへ持って行ったら、「いいよ、いいじゃない」ってOKもらいました。

私もひと目見てすごく気に入って、発売されてすぐに3サイズそれぞれ白と黒、全部購入したんですよ。シワ加工が柔らかくて使いやすいし、ファスナーの下あたりでパタっと折れるのも持ちやすいんです。

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ありがとうございます。いまは白をやめてしまって、黒とグレーの2種類。他のアイテムには茶色も加わりました。

もう白はないんですか? それは残念。小物も増えていますよね。小銭入れなどはビビッドなカラーのハラコ素材もあってすごく気になります。

いまはバッグを試行錯誤中です。紙袋みたいな薄い革のバッグは絶対ほしい、と思っていたらCORGAに先をこされたから(笑)。でもね、マチ部分の形も決まってきたので、良いものができそうですよ。

 

 

「CORGA」

ルボアと開発したブランドにはもうひとつ、コルガもあります。こちらはアッシュコンセプトのデザイナー、砂口あやさんがメインで進めています。

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hmnyのデザインプロジェクトを始めて1~2年経った頃、東京芸術大学の学生が卒業制作に革小物を発表したという話を聞いて、林社長と僕が見に行ったんです。丁寧にデザインされていて完成度が高くて素敵だったので、「砂口あやラインっていうのを作ったらいいんじゃないの?」なんて話してはいたものの、本人が大学院を休学してイタリアへ留学してしまったこともあって、すぐには実現しませんでした。

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でも、その修了制作の1作品にあったカードケースがとても印象的でね。革でできているけど平面的に折りたためるようなデザインだった。先ほどお話したJAPANブランドの時に、彼女にも一部参加してもらったのが直接のきっかけになりました。女性の革小物もいつか作りたいと思っていたから、ぴったりのデザインだったんだよね。

CORGAというブランド名はどういう由来ですか?

核とか本質とか、コア、芯がある、というイメージの造語です。
女性もの、というよりも、デザインの優れた女性的なプロダクトをつくりたかったという方が正しいかもしれない。女性を先にするとどうしても媚びたデザインになってしまうことが多いけど、それは避けたかったから。彼女のデザインに対する考え方は正しい、と直感して生まれたのが、CORGAです。

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東かがわ市でルボアが知られるようになったことが、hmnyとCORGAによって実現した大きな功績だと思っています。
本音を言ってしまえば、数としては爆発的に売れる商品ではありません。ただ、hmnyのカジュアルラインや、CORGAのエルバッグの人気が高まってきています。ゆっくり、ゆったり、無理せずに育てたいブランドのひとつです。

守りながら育ててきた、いわばつくる人たちの趣味が大いに反映されているブランドでもありますね。

いまはまた、新商品を開発中です。カジュアルラインのサイズを変更して、たくさん入る名刺入れなんかもいいな、と。現状のカジュアルラインは平たい形ですが、マチをつけてみたいと思っていてね。もともとシワ加工をする前提で素材の革を選別しているので、たとえ傷がついても風合いになるところが魅力だから。

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白色はさすがに汚れがすぐに気になってしまうので、使い始めに保護スプレーをしておいたら、いまでも良い感じに使い込めています。ぜひ白も復活させてほしいです。

よし。次の新商品では白にも挑戦してみるか。それとリュックもいつかつくりたいんだよね。

そう話しながら手が動いていますね、名児耶さん。スケッチが進んでいます。あっ、持ち手が長いのは嬉しい! A4サイズを横に入れて方からかけられるというイメージでしょうか?

‥‥‥そう、うん、なるほどね。マチをつけるとなるとまた違うイメージも広がるね。

新商品はいつ発表されますか?

6月の「インテリアライフスタイル展」です。

最初に買えるのはコンセントのショップになりますね。
藤沢SSTにできた蔦屋書店内(SHONAN T-SITE)につづき、国立にも新ショップ(nonowa 国立)がオープンしたばかりです。

4月10日から営業開始しました。
それから、東かがわ市には「ルボアデザインショップ」も完成しています。アッシュコンセプトが全面的にプロデュースし、店舗設計はイグアナボイスが引き受けてくれました。
ルボアの事務所に使っていた場所を手狭になっていた工場に変え、それに合わせて敷地内にショップ兼ショールームが誕生しました。どなたでもぜひ気軽に遊びに行ってみてほしい場所です。


 

logo_ruboa2指先の繊細な作業から力仕事までを可能にするため、
適切な素材検討・裁断・縫製と非常に高い技術が求められる革手袋製造。

ルボア製品の特徴でもある「繊細かつ強度のある革製品」をうみだす高い縫製技術は、東かがわの手袋製造によって培われました。

ルボア株式会社
〒769-2702
香川県東かがわ市松原1097番地3
http://ruboa.com/


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hmny CORGA

phot_mirei聞き手: 高橋美礼/Mirei Takahashi

デザイナー、デザインジャーナリスト。多領域のデザインに携わりながら、国内外のデザインを考察している。編集、執筆、デザインコンサルティングをおこなう。
主なデザインに「TsunTsun」(宮城壮太郎氏と共同デザイン/アッシュコンセプト「+d」)、「物語がはじまる」(世田谷美術館)、「トーキング・トーキンビ」(東京国立近代美術館)など。共著に「ニッポン・プロダクト」(美術出版社)、「2000万個売れる雑貨のつくり方」(日経BP社)など。多摩美術大学非常勤講師。落語好き。