デザイナーinterview:綾 利洋さん

今回ご紹介するのは2013年に発売した+d「葉うちわ」のデザイナー、綾 利洋(あや としひろ)さんです。

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Ha Uchiwa

京都大学、米国Yale大学で化学修士号を取得し製薬会社で研究に従事した後、米国のデザイン事務所にてデザイナーとしてのキャリアを開始。その後、ものごとをより良くするための様々な「おぉ」を考えるデザイン事務所「o-lab(オーラボ)」を京都にて2011年に創業。2016年o-lab Inc. /オーラボ株式会社設立。
日用品や伝統工芸とのコラボレーションから先端医療機器まで、分野を横断してデザイン、ブランディング、ディレクションなどを手がけています。

 

ご自身がデザインした商品について、
思いついたきっかけやコンセプトなどをお聞かせください。

綾さん:アメリカ在住時、夏の休暇で日本に帰国した際に久しぶりの日本の蒸し暑さにショックを受けたことがきっかけでした。こんなに暑かったっけ…とまいっていたのですが、クーラーなど無かった時代にも生き延びて(笑)きた日本人はどうやって暑さをしのいできたのかな、と思いを巡らせるうちに、何か暑さ以外のことに少しでも意識が向けることができれば楽しく涼を取れるのではないか、と考えるようになりました。
モノの成り立ちや由来を考えるのが好きなこともあり、葉っぱを扇ぐ うちわ、というコンセプトが自然と浮かび上がってきました。

KONCENTスタッフ(以下K):近頃も蒸し暑い日が続いていますよね。
風鈴の音で風や涼しさを感じるように、葉っぱの形をしたうちわで扇ぐことで楽しく涼を感じることができますね。

 

 

葉うちわのおすすめの使い方やポイントはありますか?

綾さん:コンセプトが生まれた時はなんとなく小さな子どもが大きな葉っぱを持っているイメージを持っていましたので、是非子どもさん達に使って喜んでもらえたら嬉しいです。また、浴衣の帯に挟むもの良いと思います。
あと、このうちわは葉脈のような形状の骨組みが大きな特徴なので、扇ぐだけでなく、光にかざすオブジェのような楽しみ方もしてもらえたら嬉しいです。

K:浴衣の帯に葉っぱのうちわ、趣があって良いですね。素敵なコーディネートになると思います。
光にかざすと和紙が透けて綺麗ですね。見た目も涼やかです。

 

デザインに興味を持ったきっかけはなんですか?

綾さん:アメリカで有機化学分野の大学院生だった頃、これも休みに日本に帰ってきた時の話になるのですが、とある本屋で偶然目に入り手に取ったのがデザインの考え方に関する本でした。
それまでデザインというと表面的なチャラチャラしたもの(笑)というイメージしか持っていなかった自分にとって大きな衝撃だったことが一つのきっかけでした。
他のきっかけもあったとは思うのですが、恥ずかしながらそれまで全ての製品は誰かがデザインしたもの、ということを考えたことが無く、そういう職業があるということを初めて知ると同時にこれが天職だ、という確信のようなものを持つのに時間はかからなかったのを覚えています。

K:そこに気が付いた時の衝撃や感動は、とても大きなものですよね。
綾さんがアメリカで勉強されていた有機化学の分野も、身の周りにたくさんあるはずなのに、
日々の生活の中では、なかなか気が付けない事かなと思いました。
綾さんにとって「全ての製品は誰かがデザインしたもの」ということに気が付いた事が、人生の大きな転機になったんですね。

 

是非、綾さんのアイデアが生まれる場所を見せてください!

綾さん:現在は古町家を改装した事務所で仕事をしているのですが、デスクワークで煮詰まることも多いので、よく事務所建物内を歩き回ったり、庭を眺めたり、打ち合わせに使う座敷に座ったりして気分転換します。

K:光がよく入ってとても素敵な空間ですね。リラックスしてお仕事ができそうです。

 

最近凝っていることはなんですか?

綾さん:2年ほど前から和太鼓チームに入って練習し、時折公の場で演奏しています。全身をかなり使うスタイルのチームなのでハードですが、身体とバチ、太鼓がリアルに連動することで生まれる音や世界観を実感することで、デザイナーとして大切な身体感覚が研ぎ澄まされる気がしています。手のマメと筋肉痛が常に付きまといますが…(笑)。

K:かっこいいですね!音とリズムと身体で表現する、これもデザインの一つな気がします。是非一度拝見してみたいです。

 

休日の過ごし方やお気に入りの場所などはありますか?

 

綾さん:骨董・ガラクタ市のようなものによく出かけます。東寺や北野天満宮で毎月のようにそのような市が開かれるのは京都の好きな所です。

K:どれも素敵ですね!!何に使っていたんだろう?という不思議なものもありますね。色合いもかっこいいです。

 

 

自分を一言で表すと?

綾さん:ロジックと感覚を常に交差させて、そのどちらも満足しようとしている人、でしょうか。

K:ロジックと感覚を別で考えるのではなく、交わらせるというところが綾さんが作り出すデザインにも表れていると思います。

 

尊敬するデザイナーやアーティストはいますか?

綾さん:デザイナーやクリエイターについては同世代の方々を含め、しばしば刺激を受けていると思うのですが、むしろ異分野の人からの影響も大きいと感じています。例えば、ダウンタウンの松本人志さんの異なる角度からのモノの見方などからは長年、無意識に勉強させていただいていると感じています。

K:なるほど!枠を外して、モノを違う角度から見ることはデザインする上でも、とても重要ですよね。

 

今後の展開について教えてください。

綾さん:これまで先端医療機器から日用品、家具、伝統工芸まで分野を横断してデザインに携わりましたが、プロダクトのデザインだけでなく、ブランディングやクリエイティブディレクションまで手がけさせていただくことが多くなりました。
また、中小企業の方とゼロからコンセプトをかたち作り、ブランドを立ち上げるお手伝いをすることが増えてきています。
デザインが力になれない分野はない、と実感しており、今後より多くの分野で世の中に役立てるよう、さらに視野を広げ活動の幅を広げていきたいと思っています。

K:綾さん、素敵な写真と共にインタビューにお答えいただきありがとうございました!

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綾さん(O-lab)のホームページはこちら