開発episode:雪眼鏡

2003年デザインに憑かれている人がいた。
馬場さん・・・・会社で仕事をきっちりとしながら、自分自身のデザインの枠を広げようと真剣にそして、寝る暇もなく戦っていた。

20081216_510374[1]デザイン戦士!そんな言葉が似合うデザイナー。
何故そこまで、自分自身を追い詰めながら、デザインをするのだろう・・・・

20081216_510386[1]彼のデザインは、会社で行なっているものとは違う、心を研ぎ澄まし、湧き出る感情を、自分自身の作品にぶつけ表現する。
デザインアーティストと言える存在を感じた。
彼のデザインに向けた考えは、真剣であり、
そして爽やかにコンセプトと向き合う心優しい求道者のような、
ひたむきさがある誠実な人である。
彼の作品帳を拝見している中でソレは存在を現した
「雪眼鏡」
なんて、繊細な表現だろう。
雪の結晶を見るためのルーペ。
雪の結晶を見たものだけが知っている、
あの同じ物が二度とない結晶の広がり、自然界の遊び心。
その神秘に満ちた結晶のダンスを見るための形が、雪ダルマとは・・・・
研ぎ澄まされたものと遊び心というものが、不自然なはずなのに、なぜか心に響いてくる。絶妙だ!

しかし、絵を描くのと商品を創るのとでは、勝手が違ってくる。
ちゃんとしたレンズを使いたい。レンズの世界を調べ始めると下町にNikonのレンズを作っている優れたレンズ工場を発見した。すぐにアポイントを入れて相談に向かった。
「うーん。出来るかな?」「面白そうだから、やってみましょう。」レンズ工場の社長がしぶしぶと、しかし、嬉しそうに行動し始めてくれた。

簡単には進まなかった。下町は分業制でモノを作っていく。
社長とその分業の工程を一つ一つ回って、問題点をチェックしていく。
「レンズのかしめ」でどうしても傷がついてしまう。R面を研磨すると、手作業のため、Rが崩れてしまう・・・・そんな、小さな商品であるためにディテールが大切で、質の部分で駄モノとなってしまい、装飾品の世界からはみ出してしまう。
社長と粘り強く、改善の道を探っていった。
結果は作業者が理解してくれるかどうかの点に尽きるようであった。

作業者を含めたプロジェクトチームが仲間意識を持ち、一丸となって、合理的に作業の仕方を模索しつつ、ベクトルの方向性を一致させることが商品のゴール(ユーザーの喜ぶ顔)となり、製品への完成と近づいていった。

そして、仕上げの段階では、
最初のロットを意地悪なほど品質チェックを行なう。
この水際で求める品質を共有しないと今後のものに同じ問題が継続的に発生してしまう恐れがある。
実際、不良率は高かった。
しかし、レンズ屋の社長は、さすが、世界のNikonを手がけているだけあって、
妥協をせずに付き合っていただけた。これぞ日本の職人気質。



phot10良いデザインがあり、創るモノと者の心が共鳴し、作品が商品へと生まれ変わる。
2003年以来、毎年9月頃から生産を開始し、翌年の4月ごろまで販売する、
季節を感じる旬なものづくりが今も変わらず続いている。
私の携帯電話には、必ず1年を通して雪ダルマがそばにあり、雪の結晶はもちろん、最近見づらくなった小さな文字を確認するために私の体の一部のように存在している。

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Noriaki baba design
馬場 威彰さん
http://www.nb-d.com/ [外部リンク]