デザイナーinterview: 浅野 泰弘さん

デザイナーインタビュー #1「浅野さんの事務所に行ってみました。」

こんにちは。
今回は、インタビューブログの記念すべき一回目。
以前に一度だけカオマル・ホワイトさんがデザイナーさんにインタビューしていましたが、
スタッフが直接デザイナーに会いにいくのはこれが初めてです。


店長を含む他数名で何度も打ち合せをして、何を訊こうかどうしようかと話し合い、
そして決まった1人目のデザイナーは浅野泰弘さんです。
メガネが似合う浅野さん。2CVに乗った、ユーモラスで楽しい方です。

事務所の中にはゲル(モンゴルの遊牧民が使うテント)が置いてあり、
その中で打ち合せが出来るようになっているユニークな事務所であるとの前情報から、期待膨らむ訪問となりました。
しかし。肝心のアポイントは12月24日。野暮でごめんなさい。
とはいえ。平日なので仕事上は別に関係なく、普通にアポ取りました。
そして。午前10時半に、お早うございまーす。と、行ってみました。
浅野さんと、事務所で働いている阿部さん、古橋さんにも同席していただいて、
皆でゲルの中へ…。

スタッフ(以下S):「どうも今日はお時間いただいて、ありがとうございます。」
浅野さん(以下A)阿部さん(以下B)古橋さん(以下F):「いいえー。」
S:「これからいくつか質問をしていきますので、ひとことふたことお答えください。」
A・B・F:「はい。笑 何だろう。」
S:「はじめに、浅野さんはなぜデザイナーになったんですか?デザインに興味を持ったきっかけなどがあれば教えてください。」

A:「え。デザイナーになった訳?」(何故か皆さんの間で少し笑いが…。)
S:「はい。けっこう訊く機会ないんで、アオクサイかんじで訊いてみました。よろしくお願いします。」
A:「デザインには、実はあまり興味がなかったんだよね。笑」
S:「え。そうなんですか?」
A:「うん。高校生の頃は美術手帖やユリイカをよく読んでいて、ファインアートに興味があったんだよね。それで、純粋な美術を勉強してアーティストになりたいと思っていたんだけど、美大進学を家族に反対されてしまってね。絵ばかり描いていた高校時代だったから、美大がだめとなるとどうしたら良いんだろう。と、色々考えた結果、工学系の建築科に進むことにしたんだよ。」
S:「そうだったんですか。建築からは、どんなふうにデザインに移行していったんですか?」
A:「その頃の美術手帖で、戸村浩先生のTOM’S FINGERという連載があって、箱の展開図がのっていて切りとって組み立てると面白い造形物になるというもので、僕はその連載が好きで毎月組み立ててみたりして楽しみにしていたんだよね。その戸村浩先生が桑沢デザイン研究所の基礎造形科の先生をしているのを知って、大学を卒業したあと働きながら桑沢の夜間部に通ったんだ。」
S:「そのときは何のコースを専攻なさっていたんですか?」
A:「1年目は基礎造形科。2年目は戸村さんがいるパッケージデザイン科。でも残念ながら、戸村先生のクラスじゃなかった。」
S:「えー。残念。」
A:「そう。笑 でも、どうしても戸村先生のクラスが良くて、学校側に頼んだけど変えてもらえなくて、それで戸村先生に直接訳を話して違うクラスなのに出席させてもらった。」
S:「じゃあ、クラス変更できたんですね。」
A:「いや、もともと席を置かれていたクラスのままだったんだけどね、授業を聴くのを許してもらえたんだよ。笑 そこからデザインの方向に言ったんだよね。戸村先生に出会えなかったら、デザインに興味が沸かなかったかもしれない。とても大きなきっかけ。」
S「戸村先生と出会った桑沢デザイン研究所での授業は、とても大事な時間だったんですね。」
A:「そうだね。フランク・ザッパとか、音楽をかけながらのとてもおもしろい授業だった。その後も戸村先生とは交流がつづいて、卒業後2年目には手伝いをさせてもらうようになった。授業の準備をしたり、授業中も生徒たちに話したり。楽しい経験だったよ。」
S:「そんな経緯があったんですね。何度もお会いしているのに初めて伺ったので、興味深いです。桑沢時代はどんな学生だったんですか?」
A:「パルコの壁に絵を描いたりしてたな。あまり協調性のあるタイプではなかったかもしれないね。」
B:「クラス変えてほしいって言ったり。笑」
A:「学校からはややこしい生徒だと思われていたかも…。あんまりここで言わない方が良かったかな?笑」
F:「時効ですよ。笑」
S:「密度の濃い2年間だったんですね。」
S:「デザインするときってどんなふうに進めるんですか?例えば、KONCENTで紹介させていただいているものだと、どんなかんじでプロジェクトが進んだんですか?アイディア出しとか…。」

A:「うーん。そうだね。それぞれ経緯は違うけど、例えば、『こち』のときは皆まじめにやってたんだけど、僕は電車の中とかで。笑」
F:「浅野さんだって真面目にやってたじゃないですか。笑」
B:「遅くまでゲルの中でやってたじゃないですか。笑」
A:「電車の中でもスケッチ描いたんだよ。笑 アイディアって不思議で朝にまとまるんだよね。」
S:「朝はアイディアが出やすいですか?」
A:「いや、前日に出たいろいろなアイディアが、一晩経つと分解されるというか…。朝になると前日でた色々な可能性がひとつの方向にまとまって見えてくるんだよ。」
B:「前日とはぜんぜん違うことやり始めちゃうときもありますよね。笑」
A:「前日のものの延長でまとまるときもあれば、別の方向に定まるときもある。場合によりけりだよ。『こち』のときは、こんな風にノートにスケッチを描いた。(ページをめくりながら)はじめはアルファベットの26文字バージョンを考えていたんだよね、人の名前のイニシャルとかを組み合わせられるように。そこから、意味のある単語のスペルに絞ることになって、LOVEとか、HAPPYとか。プロジェクトによって違うけど、『こち』は、だいたいそんな流れかな。」
S:「デザインの仕事をしているなかで、尊敬しているデザイナーはいますか?」
A:「さっきも名前を出したけど、戸村浩先生。学生時代から、それはずっと変わらないよ。今でもね。発想がとてもおもしろくて、例えば、戸村先生の本に出ている課題で立方体を完全に2分割する形状をどう作るかっていうのがあってね、色々な解決方法があると思うんだけど、立方体の中に、ちょうど半分の位置まで液体を入れるわけ。そうすると、どうんな風に動かしても常に立方体は完全に2分割されていることになる。初めてこれを見たとき、とても斬新に感じておもしろい!と思った。」
S:「へー。ほんとだ。私はてっきり、単純に立方体を半分にした箱を2個想像してました。なるほどですね。確かにそういうふうに解決できる。おもしろいですね。」
A:「デザインをしている人はよく、使いやすさや機能について考えるよね。とても大事なことだけど、そればかりだと新しいものってなかなか生まれてこない。だけど、戸村先生の発想はすごく柔軟だよね。僕は縛りのない柔軟な発想ってとても大事だと思うんだ。だからアイディアを出すときは、人に対してどうかって言うのはあんまり気にしないようにしてる。もちろん、アイディアをデザインとして完成させていく過程では、機能面や使い勝手も考えるけどね。」
S:「ははー。人に歴史有りですね。デザイナーになるきっかけから、デザインに対する考え方まで。聞いていてとてもおもしろいです。次は少し離れてちょっとプライベートに関する質問ですが、趣味とか最近凝っていることってありますか?」
A:「自転車、ヨット、水泳!あとは…。」
F:「ガラクタ集め?笑」
A:「いいえ。笑 ごく最近だとウクレレっていうのもあるかな。あ、でもこれは続かないかもしれないから、趣味にはいらないかもしれない。笑」
S:「どれも長く続けてるんですか?」
A:「自転車は5年、ヨットは3年、水泳はもう10年くらいになるかな。毎日1kmは泳ぐよ。ヨットは週末に乗る。お台場やディズニーランドに海から行ってみたり。」
S:「おもしろそう!阿部さんと古橋さんは乗せてもらったりするんですか?」
F:「船酔いしちゃうんですよね…。」
A:「船酔いしなくても誘っても来てくれないんだ。笑」
B:「船酔いはきついんですよ。車は酔ったらすぐ降りられるからいいけど、船だとずーっと乗っていないといけないじゃないですか。」
A:「そうだよね。船酔いがひどい人は、あまりに気持ち悪くて海に飛び込んじゃったって言う話もあるくらいだから。」


S「浅野さんの出没スポットってどこですか?よく、弊社のS氏がGTD駅付近で遭遇するって言ってましたけど。あ、でもAKB駅付近でも目撃証言があったし、GTDっていうよりうちのS氏と遭遇しやすいだけでしょうか。」
A:「それいつの話?そう言えばGTD駅付近では何度かS氏を見かけたよ。ただ近所なだけだよ。って言ってもGTDにいつも居るわけじゃないからなー。週末は東京湾にいるよ。」
B:「東京湾?笑」
S:「ヨットですね?」
F:「出没スポットは東京湾てことで。笑」
S「じゃあ次の質問。座右の銘はなんですか?変な事訊いてごめんなさい。」

B・F:「あえて言うなら、何も気にしないことじゃないですか?笑」
A:「えー。笑 あんまり考えたことないけど、特にないや。縛られたくないからそういうのあんまり好きじゃないよ。」
S:「阿部さんと古橋さんから見た浅野さんはどんな人ですか?」
F:「うーん。皆とは逆向きの人?」
B:「そうそう、人と同じだと嫌ですよね。笑」
F:「お昼ご飯とか、人と注文かぶると他のに変えちゃったり。笑」
S:「何も気にしないようで、気にしてるじゃないですか?笑」
A:「いや、だって皆同じもの頼むのも何か変じゃない?笑」



S「なるほど、ちょっとそういうところあるんですね。笑 では、最後の質問ですが、今後の展開について教えてください。」
A:「ホームレスにならないように気を付けます。笑」
S:「なんですかそれ。笑」
A:「いや、たまになんとなく、いつそうなってもおかしくないかもしれないと思うときもあるでしょ?笑」
S:「誰しもあります。いつ何がきっかけでそうなるかわからない。」
A:「そうなんだよね。笑 ちょっと違うけど、遊牧民の生き方に憧れている部分があって、必要最低限のものしか持たずに土地から土地へ移動するでしょ?彼らにとっては家っていうのは公共の場で、プライベートは外にあるんだよね。旅人がくると歓迎して家に入れてお茶を出してくれたりするんだけど、話しながら他の町のことをきいたりして、家が情報交換の場になるんだよ。彼らの生き方って無駄がない。環境にも良いと思う。あんな風に物を持たずに我が身だけで生きていきたい。それが理想だな。」
B・F:「いっぱい物ありますね。笑」
S:「後ろにある木の模型はなんですか?」
A:「あ、それは、ダ・ビンチが描いた設計図をもとに作られた模型なんだよ。ダ・ビンチみたいになりたいな。笑」
S:「どうもありがとうございました。」

おぼつかない司会進行ぶりに、嫌な顔ひとつせず親切にご対応くださった浅野デザイン事務所の皆さんに感謝!
Asano Design Studio
浅野 泰弘さん
http://www1.nisiq.net/~asano/ [外部リンク]


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雨の日に水溜りにできる”SPLASH”をイメージした傘立て。