【前篇】「店舗」から「居場所」に。|KONCENT 駒形本店 取材記

7月初旬のある日、僕は隅田川沿いの路地を歩いていました。目的地はh concept(アッシュコンセプト)が運営するKONCENT 駒形本店。7月4日にオープンしたばかりの新店舗です。

ついてないことに、その日は朝からどしゃぶりの雨。「ただでさえ暗いニュースばっかりなのに、こうも天気が悪いと、なんだかさらに気が重くなるな……」。そんなことを考えながら、僕は歩き続けました。

キーワード:h concept
東京都台東区に拠点を構えるデザイン会社。「モノづくりを通して世の中を元気にする」というコンセプトのもと、メーカーやデザイナー、職人と連携し、さまざまなプロダクトを世に送り出しています。

キーワード:KONCENT
h conceptが運営するデザインプロダクトショップ。オリジナルアイテムを中心に多種多様な製品を展開しています。2020年8月現在、東京都内を中心に11店舗を展開中。

しばらくすると、目的の店舗が見えてきました。黒を基調としたシックでモダンな外観。レトロなビルや歴史的な建造物が多い町並みにしっかりと馴染んでいます。それではさっそく、お邪魔するとしましょう。

取材メモ:駒形の雰囲気
周囲には和菓子店やうなぎ料理専門店など、趣のある店舗が多数点在。食べ歩きを楽しんだり、史跡を巡ったりするのもよさそうです(個人的には「かばん博物館」が気になりました。いろいろと落ち着いたら行ってみたいです。)

「平日さんこんにちは。雨のなか、ありがとうございます」

中に入ると、スタッフの戸村夏佳さんが出迎えてくれました。いえいえ、こちらこそ朝早くからありがとうございます。

今回はお買い物をしている気分を味わえるよう、私、渡辺平日が聞き手になって、戸村さんに店舗や商品について案内していただきます。それではよろしくお願いします。

戸村夏佳

2016年より h conceptとKONCENTの広報を担当。ものづくりの現場に携わりつつ、製品やショップの魅力をみなさまにお届けするべく日々奮闘しています。大学ではテキスタイルデザインを学んでいました。日本茶が好き。

渡辺平日

日用品愛好家。毎日が平日のつもりで、日夜せっせと文章を書いています。趣味は町歩きと物件探しと民話収集。その手の話題が耳に入ると反応して振り返ります。主な寄稿先は「LaLa Begin」「北欧、暮らしの道具店」「goodroom journal」など。

HP:https://wtnbhijt.foriio.com/

  • この取材は2020年7月初旬に行ったものです。
  • 新型コロナウイルスの感染リスクを減らすため、オンラインで打ち合わせをし、最小限の人数で取材・撮影を行うなど、できる限りの対策を施しています。
戸村

「それではご案内しますね。入ってすぐの場所におすすめのアイテム、その奥にオリジナルブランドの+dとトイ、ベビー・キッズ、キッチン用品のコーナーがあります」

渡辺

「ふむふむ。全体的な印象としては、蔵前時代よりもギュッとまとまった感があります」

戸村
「そうなんです。面積は約80%に減りましたが、商品数はできるだけ維持しましたので、そのぶん濃密になっていますね」

キーワード:蔵前時代
もともとは蔵前に本店がありましたが、ビルの建て替え工事に伴い、惜しまれつつも2020年5月に閉店。それから約2ヶ月後、蔵前からほど近い駒形に拠点を移し、「新しい一歩」を踏み出すことになりました。

戸村
「さらに奥側がファッションアイテムとインテリアのコーナーとなっています」
渡辺

「主要なジャンルはしっかりと揃っていますね。それにしても、ラインナップの多彩さには感心してしまいます。一部は引き(仕入れ商品)ですけど、ほとんどはオリジナルかコラボアイテムですよね?」

戸村

「そうですね、それを知って『えっ、ひとつのメーカーのセレクトショップなんですか?』と驚かれるお客様も多いです笑」

取材メモ:取扱商品について
駒形本店では約300種類のアイテムを展開中(色やサイズ違いも1種類と換算)。そのうちの約85%はオリジナルのプロダクトとのこと。

渡辺

「ではまず、ファッションアイテムから見ていきましょう。いきなり個人的な趣味で恐縮ですが、このLight Shopperが気になっていて……。おお、名前のとおり、とっても軽いですね」

戸村

「重量は100g程度で、だいたい、玉子2つ分くらいの重さです。このサイズ感でこれぐらい軽いのは珍しいと思います。傘などに使用される素材を使っているので、水や湿気にも強いんですよ」

渡辺
「夏場は急に雨が降ったりするし、撥水性が高いのはうれしいです。しかもこれ、持ち手もしっかりしていますね」
戸村

「長く愛用していただけるように丈夫な合皮を採用しました。見た目はソフトな印象ですが、かなりタフに使えますよ」

渡辺
「なるほど、かなり便利そうです。ところで、ちょっとまえにレジ袋が有料化されましたよね。言うなれば『エコバッグ戦国時代』といった状態ですが、このLight Shopperの動きはいかがですか?」
戸村
「もともと好評でしたが、やはりここしばらくは特に動いていますね。ただ、一過性のブームというよりは、『実用品』としてお選びいただいているようです」
渡辺

「『しかたないから買う』ではなくて、『これが欲しいから買う』ということでしょうか。あくまで僕個人の考えですが、そっちのほうがずっと気持ちいいなと思います。必需品だからこそ、こだわったものを選びたいですよね。しかも、それで環境保全に貢献できるなら、もう言うことないです」

渡辺
「Light Shopperはシンプルでしたが、それ以外のバッグはわりと、フックのあるアイテムが揃っていますね」
戸村

「たしかに、どこかに『引っ掛かり』があるものばかりですね。『ザ・スタンダード』がないというか。たとえばこのToteruckはおもしろいですよ」

渡辺

「名前から察するに、トートにもリュックにもなるアイテムですか?」

戸村

「そのとおりで、シーンに応じて使い分けられるバッグです。ポケットがたくさんあるので小物もしっかり整理できますし、大きめのノートパソコンも余裕で入りますので、テレワークにもおすすめですよ」

戸村

「企画当初は『女性の旅行を快適にする』というコンセプトでしたが、男性陣から『僕らも使いたい!』と声が上がって……。最終的には性別を選ばないシンプルなデザインに仕上がりました」

渡辺

「機能的だけどゴテゴテしてないのがいいですね。職業柄のせいか、どうしてもこういう目線で見ちゃうのですが、取材や撮影にもよさそうです」

取材メモ:Toteruckのひみつ
Toteruckのショルダーストラップ、なにかに似ていませんか? なんとシートベルトを採用しているそうです。とにかくタフで肩にも食い込みにくい。こう考えると、ショルダーストラップとしては最適な素材なのかもしれません。

戸村

「こちらはsoiというアクセサリーブランドのコーナーです。ショップスタッフのこばやしみなさんが立ち上げたブランドでして、本人が一点ずつ手作業で作っています」

渡辺

「働いている方のブランドを扱っているのは珍しいですね。いや、探せばなくはないのですが、こう、片手間的にちょこっと置いてるぐらいで。これぐらい本格的に展開しているのはなかなか無い気がします」

渡辺

「(こばやしさんが美術大学出身と聞いて)そういえば、h conceptは美大出身のスタッフさんが多いらしいですね?」

戸村

「ええ、そうですね。手先が器用なスタッフが多く、ディスプレイにも力が入ってますよ。お花をひとつ活けるのにもこだわってます」

渡辺

「制作で培った能力が発揮されているわけですね。前から思っていましたが、スタッフさんが考案したアイテムがたくさんあるのもh conceptの特徴ですよね。作った本人から直接話が聞けるのって、これはもうハッピーなことです」

取材メモ:店舗で取り扱うようになったきっかけ
「面接のときに『こういうものを作っています』と代表に見せたところ、非常に気に入ってくださって、お店で展開してもらえることになりました」とはこばやしさんの談。「そんなことあるんだ」といい意味でびっくりしてしまいました。

渡辺

「では、次のコーナーへ……。おっと、レジ前にさりげなくkcud simpleが。この、いい意味で『目立たない佇まい』は、生活用品としては大きな魅力ですね」

戸村
「私もそう思います。特にこだわったのはキャスターですね。ふだんは隠れて見えないので、生活感が出にくくなっています」
渡辺
「『えっ、転がるんだ?』みたいな驚きがありますよね笑」
戸村

「けっこう皆さんビックリされます笑 軽い力で動かせるように形状や重心などにも工夫をこらしているんですよ」

渡辺

「さて、次は生活用品のコーナーですね。僕はこのtidyというブランドが好きで、特にFloorwipeはずっと愛用しています」

戸村
「性別や世代を問わず、様々なお客様から支持されているブランドとなっています。h conceptのスタッフにも愛用者が多いんですよ」
渡辺

「なるほど。あっ、このSqueegee miniも使ってます。いや、ほんと、名作ばかりですね。ただ、こういう実用品は、実物を見ないと良さが伝わりにくいのが難点で……。レビューを書くときはあれこれと苦心しています」

戸村
「やはり『触ってみないと分からない』ところはありますよね。お越しの際はぜひ、手にとって確かめていただければと思います」
渡辺

「個人的にはこのS Hookを大プッシュしたいです。非常に優秀なプロダクトで、家のフックはほぼこれです。バッグやカメラ、ドライヤーなんかをハンギングするのに重宝しています」

戸村

「ありがとうございます。実はこれも『引っ掛けているものを取ると、つられてフックも取れてしまうのがストレスだから、なんとかしたい』という、スタッフの声から生まれたアイテムなんですよ」

渡辺
「そうだったんですね! いや、お世辞抜きに、これはほんとうに使いやすいです。しかも『便利グッズ』っぽくないのがいいんですよね。ちゃんと実用品としてデザインされているというか」
Sフックはこんな感じで愛用中。フックの先端部分は折り曲げ可能で、狭い隙間にも差し込みやすいです(筆者撮影)
渡辺
「ところで、『フックの両端がクルッとなっているものがあればなあ』と思うときがあって。たとえば取っ手がついたガラス製のコップを干したいときに、両側とも外れにくくなってると助かります」
戸村
「なるほど……。花瓶を乾かしたいときにもよさそうですね」
渡辺
「名前をつけるとしたら『Sフック』ならぬ、『8(エイト)フック』か『∞(インフィニティ)フック』といったところでしょうか笑」
戸村

「ナイスアイデアです笑 開発チームにリクエストを共有しておきますね」

箸休めコラム:SOL’S COFFEE
店内にはカウンタースペースがあり、カフェメニューを注文することができます。コーヒーを提供するのは地域を代表する名店SOL’S COFFEE。店舗にお越しの際は、ぜひ、極上の一杯を堪能してみてください。

平日限定ですが、8時から店頭でコーヒーを販売しています(店内には入れません)。取材は9時から行いましたが、通勤や散歩のついでに立ち寄っていく方がたくさんいました。「店舗を地域の交流の拠点にしたい」という想いが、こういう取り組みからも伝わってきます。

前篇はここまで。

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