【後篇】「店舗」から「居場所」に。|KONCENT 駒形本店 取材記

2020年7月に移転オープンした『KONCENT 駒形本店』。

日用品愛好家の渡辺平日さんに店舗を取材していただきました。

渡辺平日

日用品愛好家。毎日が平日のつもりで、日夜せっせと文章を書いています。趣味は町歩きと物件探しと民話収集。その手の話題が耳に入ると反応して振り返ります。主な寄稿先は「LaLa Begin」「北欧、暮らしの道具店」「goodroom journal」など。
HP:https://wtnbhijt.foriio.com/

 

  • この取材は2020年7月初旬に行ったものです。
  • 新型コロナウイルスの感染リスクを減らすため、オンラインで打ち合わせをし、最小限の人数で取材・撮影を行うなど、できる限りの対策を施しています。
渡辺

「ここはベビー・キッズのコーナーですね。いろいろなアイテムがありますが、プレゼントで人気なのはどれですか?」

戸村

「このtakというブランドのKIDS DISHシリーズは、贈り物としてよく選ばれています。SNSなどで知って、店舗へ見にこられる方も少なくないようです。小さな子どもが使うものですから、やはり、実物を確認したいですよね」

渡辺
「品質もしっかりしているし、かわいすぎない絶妙なデザインもいいですね。『ふつうの食器では素っ気ない、でも、キャラクターが印刷されてるのもちょっと……』という需要に、見事に応えているように感じます」
渡辺

「ギフトセットもあるんですね。うーむ、これをプレゼントされたらうれしいだろうなあ」

戸村

「私もうれしいです笑 ちなみに、これはギフトの一例で、ご予算やご要望に応じていろいろと提案できます。お悩みのときはご相談いただければと思います」

渡辺
「ここがキッチン用品のコーナーと。おや、これは漏斗(ろうと)ですか?」
戸村

「はい、ステンレス製の漏斗と、シリコーン製のホルダーがセットになったSosogというアイテムです。自立するほど安定しているので、どなたでも安心してお使いいただけます。ちなみに、ホルダーも漏斗として使用可能です。穴が大きいので、コーヒー豆などを容器に移すときに重宝しますよ」

渡辺
「薬やサプリメントなんかを移し替えたいときに便利そう。地味だけどこれはすごいアイテムですね。ところで、これって前のお店にもありましたか?」
戸村

「扱っていましたが、低くて見えづらい場所にありまして……。今回、もっと目立つところにディスプレイしてみました」

渡辺

「隅々まで見たつもりだったのに気がつきませんでした。こんな思いがけない出会いがあるのも実店舗の醍醐味ですよね。こういう実物を見ないと魅力が伝わりにくいアイテムは、ネットショップではまずスルーしてしまうので……」

渡辺

「次は+dとトイのコーナーを見させてください。おっ、CAOMARUがたくさん並んでますね。超が3つ付くほどのロングセラーアイテムですが、KONCENTではいかがですか?」

戸村
「ずっと変わらず人気を保っていますね。ここからh conceptを知ってくださるお客様も多いんですよ」
渡辺

「文字どおり会社の『顔』というわけですね。取り扱っている店舗も多いし、インテリアに興味がない方でも、一度は見たことがあるかもしれません」

渡辺

「顔といえば、このsoilも、どのショップでも見かけるブランドになりましたね」

戸村
「そうですね、CAOMARUと同じく、soilから私たちを知ってくださるケースも増えています」
渡辺

「特にBATH MATは『ひとつの新しいジャンルを作った』と表現しても差し支えないレベルですよね。ブームを通り越して、日用品として定着しつつあるように感じます」

戸村

「そう言っていただけてうれしいです。今後の展開としては、『定番以外のアイテムの認知度を上げていくこと』が課題になりそうです。『BATH MATやCOASTER以外もあるんだぞ』と……」

渡辺

リング用のホルダーカミソリ専用のトレーなど、マニアックなプロダクトも揃っていますが、どうしても定番品の影に隠れてしまいますよね……。ところで、今季もラインナップが増えたようですが、新作ではどれがイチオシですか?」

戸村

「新しいアイテムですと、このMASK CASEはいかがでしょう。珪藻土とリサイクルアッシュ(製紙工程で発生する焼却灰)を混ぜ込んだ袋が入っていて、不快な臭いなどを軽減させることができます」

渡辺

「へええ、見た目はシンプルなのに高機能なんですね。マスクを使う機会も増えたし、プレゼントにしても喜ばれそうです。……あれ? コロナウイルスが深刻化したのは今年の2月ごろでしたよね。それからと考えると、いま店頭に並んでいるのは早すぎるような。もとはほかの用途で開発していたのでしょうか?」

戸村

「ええ、もしコロナウイルスに合わせて作ったとしたら、まだ製品化されていないはずですよね。実は風邪やインフルエンザ、花粉症対策のために企画していたアイテムなんですよ。偶然というのは変かもしれませんが、たまたまタイミングが被ったという形ですね」

渡辺

「なるほど、合点がいきました。しっかり時間をかけて開発したマスクケースを、この時期に入手できるというのはありがたいですね……!」

戸村

「トイのコーナーに戻りまして……。イチオシはこのLove & Peace Gunです。かなり本格的なアイテムで、ゴムを4連射することができます。特に最近はおうち遊び用として好評のようです」

渡辺
「おっ、よく見たらゴムがハートになってますね。芸が細かいなあ」
戸村

「遊び心がありますよね笑 ちなみにご家庭にあるゴムも使用可能です。的も付属しますが、自分たちで作ってみてもいいかもしれません」

渡辺

「お菓子の空き箱なんかをアレンジして、ターゲットを自作するのもおもしろそうです。いや、それにしてもクオリティーが高い。この数字部分の成形なんか緻密ですよね」

戸村

「信頼できる日本の工場で作ってもらっています。そうそう。魅力がひと目で伝わるよう、パッケージも工夫したんですよ。外出しづらい時期なので、こういうアイテムを贈ると喜ばれると思います」

渡辺

「すみません。ふつうでしたら最初に案内してもらうところですが、最後になってしまいました……。お店の一番目立つところにあるのが、この新作コーナーですね。これはエプロンですか?」

戸村

「こちらはハンカチとしてもエプロンとしても使えるハンカチエプロンというアイテムです。外食が大好きなスタッフが考案したもので、細かいところまで丁寧に作り込んでいます」

渡辺

「へえ、おもしろいアイデアですね! 紙エプロンを用意しているお店もありますが、ないお店もあるので、持っておくと助かりそうです」

戸村
「目の詰まった素材を採用しているので、タレやスープの飛び散りもばっちり防いでくれます。いざというときに備えて、お守りがわりにおひとついかがでしょうか?」
渡辺
「いざというときはあっけなく訪れますからね笑 ぜひバッグに忍ばせておきたいです」

取材メモ:定番ギフトになりそうな気がします
ものがしっかりしてるし、パッケージも凝ってるしで、老若男女問わず喜ばれそうだなと感じました。母の日や父の日、敬老の日のプレゼントにぴったりだと思います。

渡辺
「戸村さん、今日はありがとうございました。正直に告白すると、近頃はなにかと暗いニュースばっかりで、ここに来るまえはちょっと落ち込んでまして……」
戸村
「その気持ち、分かります。きょうは天気も悪かったですしね笑」
渡辺

「どしゃぶりでしたね笑 でも、一歩足を踏み入れた瞬間、パッと気分が明るくなって。『そうか、お店で好きなものを探すのって、こんなに楽しかったんだ』ということを思い出しました」

戸村
「それはとてもよかったです。駒形本店は2面がガラスになっていて、物理的にも開放的な空気が漂っていると思います。精神的な面では、『大変な局面ではあるけど、やっと、お客様に向き合える場ができたこと』が私たちの活力になっていますね。その高揚感というか、ポジティブなムードが、渡辺さんに伝わったのでしょうか」
渡辺

「なんだかそんな気がします。うん、きっとそうですね。……そういえば、緊急事態宣言の影響で、(蔵前本店は)閉店のイベントができなかったと聞きました。そのときの、ある種の『モヤモヤした気持ち』のようなものが、エネルギーになっているのかもしれませんね」

渡辺
「では最後に質問をさせてください。かなり抽象的で申し訳ないですが、これから駒形本店は、どういうお店になっていくのでしょうか?」
戸村
「かなり難しい質問ですが……がんばってお答えさせていただきます笑 ひいき目もあるかもしれませんが、移転前の蔵前本店は、あの街の定番となりつつあったと思います。『蔵前に来たから、KONCENTにも寄ろうよ』というか」
渡辺

「うん、お世辞抜きに地域から愛されていたと思います」

戸村

「駒形本店のオープニングの日には、蔵前時代の常連様がたくさんお越しくださって。『ネットでも買えるけど、ここで買いたいから、オープンまで我慢してたんだよ』と言ってくださるお客様もいらっしゃいました。ほんとうに心から嬉しかったですね」

取材日(7/6)の様子。店頭には親交のあるメーカーやブランド、店舗や職人さんから贈られたアレンジメントがぎっしりと並んでいました。
戸村

「なかなか言葉にしづらいのですが、街とそこに暮らす人々にとって、KONCENTが『開かれた空間』になること。それが私たちの目標ですね」

渡辺

「なるほど。(しばらく間があって)『店舗』から『居場所』に、ということでしょうか?」

戸村
「……なるほど。うん、たしかに。ショップに行くときってどうしても身構えてしまいますよね。『なにか買わないと』という感じに。でも、私たちとしては、もっと気軽にお越しいただきたいなと考えています。『あの店舗に行こう』というよりは、『あの場所に行こう』というふうになれば、それは理想ですね」
渡辺

「うんうん、そういう場所になれば素敵ですね。日用品愛好者として、これからの展開がとっても楽しみです。さて、まだまだ聞きたいことがあるのですが、そろそろ開店の時間になりますし、今回はこのあたりで。きょうはありがとうございました」

戸村
「こちらこそ、ありがとうございました」

取材を終えて

取材が終わったあと、なにげなく外を見るといつの間にか雨は止んでいて、(ちょっと信じられなかったのですが、)ぶ厚い雲の合間から太陽が顔をのぞかせていました。自分でも「こんな表現は安易だな」と感じつつも、この天気が「KONCENTの、そして、h conceptのこれから」を示唆しているように思えてなりませんでした。

こんな状況ですから、気軽に「お店に行きましょう」とは言えません。……また、いろいろなことが落ち着いたら、ぜひ遊びに行ってみてください。きっと、疲れた心が満たされていくような、不思議な気持ちになれるはずです。

そうそう。さいきん、おすすめのショップなどをまとめたマップが完成したようです。気軽に外出できるようになったら、この地図を片手に、町歩きを楽しむというのはどうでしょうか。なお、僕のおすすめのお店は「Nui.」「VISION GLASS JP SHOP」「洋菓子レモンパイ」、戸村さんは「菓子屋 シノノメ」、h concept代表の名児耶さんは「並木藪蕎麦」です。

KONCENT駒形本店
所在地: 東京都台東区駒形2-6-10
電話番号:03-6802-8433
営業時間:11:00〜19:00

渡辺平日さんによる「KONCENT 駒形店」の

取材記、いかがでしたでしょうか?

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