Design Story Flowerman Mini (前篇)

2020年4月末に発売した +dの新作、花を顔に見立てた一輪挿し「フラワーマン ミニ」。
今回は「フラワーマン & フラワーマンミニ」のデザイナー 坂本 史(さかもと あゆみ)さんにお話を伺いました。

前篇では「フラワーマン ミニ」の親とも言える「フラワーマン」についてもお話いただきました。

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フラワーマン  & フラワーマン ミニのデザイナー 坂本 史(さかもとあゆみ)さん


ドイツで生まれた フラワーマン

KONCENT STAFF(以下、K):
もともと「フラワーマン」は坂本さんと、
もう一人のデザイナー内山知美(うちやま ともみ)さんが

海外留学中に経験したことを元に2014年に生まれたプロダクトでしたね。


坂本 史さん(以下、坂本さん):

そうですね。

ドイツでの留学中、花屋さんでガーベラを買ったら、
お店の方が花の中心にぷすっと針金を刺して、茎にワイヤーを巻き付けて渡してくれたんです。

何も言ってないのに、花が萎れないようまっすぐに固定した状態で渡されたことに驚いて。

日本でも表現のひとつとしてワイヤーを使っている華道家の方もいますが
そういったものとはまた意味合いが違いますし…。
土台の文化が異なっていることを実感したというか…びっくりしましたね。

そこで、花が枯れていく過程も含めてポジティブに見せるフラワーベースができないかと思い
当時、一緒のクラスで授業を受けていた内山さんと共同で「フラワーマン」をデザインしました。


2014年発売 +d フラワーマン  左:シッティング(座り)、右 :スタンディング(立ち)


K:
日本とドイツどちらの文化にも触れたからこそ生まれたプロダクトですね。
当時はどのように製作していたのでしょうか?.    


坂本さん:

私はグラフィックやイラストなど平面的なデザイン、
内山さんは彫刻など立体的なデザインが得意だったので
私が描いたイラストを形に起こしてもらいました。

現在は彼女が遠方に住んでいることもあり
「フラワーマン ミニ」は私が立体的なデザインも進めていきました。

ただ、やはり得意分野ではなかったので…
形だしの部分では内山さんの造形や雰囲気なども意識しながら、
窯元の方たちにもいろいろと助けていただききました。


K:

「フラワーマン」を発表したのも海外留学中のことでしたよね。


坂本さん:

当時は内山さんと一緒に、留学先のプロダクトデザインの授業でプレゼンもしていました。
「フラワーマン」を出すと、みんな笑ってましたね。なんだあれ!みたいな。(笑)

ドイツでは機能美が重要視されるところがあるんです。
美しさには機能が必須で、生活の中でも実用的であるべきという雰囲気が強い中で
私たち二人が提案した「フラワーマン」はかなり異色の存在だったようです(笑)

でも、花を生けて、花が枯れていくという過程で
なんか表情に見えるな、枯れていくのが面白く見えるなというのは伝わったようで
授業で出す度にメインディッシュのように笑ってくれていましたね。


K:

いかにキャッチーな存在だったかも伝わってきます。(笑)


フラワーマンは 花が咲いている時だけでなく、枯れていく過程もポジティブに見せてくれます。
お花が枯れてくると居眠りをしているように見えたり、考えごとをしているように見えたり。様々な表情の変化が楽しめます。


K:
そして 初めて発表した ドイツの国際見本市 “ambiente(アンビエンテ)” で、
弊社 アッシュコンセプト代表の名児耶(なごや)が「フラワーマン」、そしてお二方と出会います。



坂本さん:

ambienteに参加するのも初めてだったので、勉強の為に内山さんとブースを回っていて。
日本から出展しているブースがあって、
『あ、これ美術館でよく見るやつだ!』と思いながら見ていたのが、アッシュコンセプトさんでした。

そこで『君たちも出してるの〜?』とめちゃくちゃ笑顔の素敵なおじさまが声をかけてくれて。
その方が名児耶さんだったんです。

私達、学生のブースは本会場の外のエスカレーター横下にあったんですが、
名児耶さんが一緒について来てくださって。

そこで「フラワーマン」を見て、
『何コレ〜!!』と子供のように目をキラキラさせて
その後すぐ『うちで一緒に作らない?』という言葉を頂いたんです。


K:

その場で一気にお話が進んだんですね!


坂本さん:

何がなんだかわからないまま名刺を受け取ったんですが、
『私たちすごい幸運だね!!』と2人で話していました。

「フラワーマン」は慣れない土地で頑張って作っていろんな思いがあったので、

名児耶さんに見つけて頂いたことが本当に本当に嬉しかったです。

帰国して、ものすごく緊張しながらアッシュコンセプトさんにお伺いして。
名児耶さんやチームの方々の前でプレゼンをさせて頂いた時の事は今でも覚えています。



K:

学生の作品が並ぶエリアの中でも

一際目を惹き、思わず立ち止まってしまうインパクトがあったと名児耶も話していました。
花が枯れていく姿も美しいという捉え方には、日本の侘び寂びのようなものを感じたとも。

デザイナーが物に込めた想いやメッセージを発信している+d(プラスディー) に
ぴったりの作品との出会いだったんですね。


新しく生まれた ミニサイズ

K:
そこから6年。

今回の「フラワーマン ミニ」は、KONCENTのお客様の声を元に、
坂本さんへ 小さい「フラワーマン」をつくりたいと相談させていただきました。

デザインした当時は、このような小さいサイズへの展開を考えていましたか?


坂本さん:

当時は全く考えていなかったですね。

実は「フラワーマン」の構想段階では、もっといろいろな形やポーズのものがありました。
男性だったり女性だったり赤ちゃんだったり。
ただ、これだけ小さな 手のひらサイズのものはデザインしていませんでした。

ドイツの国際見本市“ambiente”に出展したときには、
今販売しているスタンディング(立ち)、シッティング(座り)と…寝転んでいるものもありましたね(笑)


K:

懐かしいですね…!
水が入れにくかったことなどもあり、残念ながら製品化はされていませんが
モデルを拝見した時の驚きを覚えています。


2013年 ドイツの国際見本市 ambiente にて。 幻の寝転んでいるフラワーマン。

K:
初期の試作品では筋骨隆々だったとの噂も耳にしましたが・・・(笑)


坂本さん:

筋骨隆々というよりは、完成品のものより少し足が長かったり、
実際のヒトにもっと近い形はしていたかもしれません。(笑)


K:

確かにプロポーションが少し違うだけでも印象が大きく変わりそうです。
この丸みを帯びたボディがポイントのひとつかと思いますが

どのようにしてこの形になっていったのでしょうか?


坂本さん:

花を生けたときに、有機的なラインはバランスがいいんじゃないかと思っていたことと、
丸みを帯びたおなかだったり、おしりだったりというのは シルエットがファニーな感じがして。
そういった要素を入れていって生まれた形ですね。


K:

ドイツで生まれ、ドイツで育った大きな「フラワーマン」というわけですね(笑)


前篇はここまで。

後篇では「フラワーマン ミニ」についてさらに詳しくお話を聞いていきます。


今回登場した 製品の詳細はこちら。

+d フラワーマン

+d フラワーマン ミニ