Design Story UKI HASHI (後篇)

2007年2月に誕生し、10年以上にわたり世界各国で販売されている+d 「ウキハシ」。
2020年10月のリニューアルにあたり「ウキハシ」のデザイナー・小林 幹也(こばやし みきや)さんに、
デザインのきっかけやコンセプト、カラーリングなどについて改めてお話を伺いました。

*前篇はこちら

・この取材は2020年9月中旬に行ったものです。
・新型コロナウイルスの感染リスクを減らすため、最小限の人数で取材・撮影、スタッフのマスク着用などの対策を行っています。

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カラーリニューアルで進化する「ウキハシ」

KONCENT STAFF(以下、K):
2007年2月に発売が開始された「ウキハシ」ですが、実はカラーリニューアルは、
今回が初めてではありませんよね。

 

小林幹也さん(以下、小林さん):
最初に発売された色を含めると、今回で4シリーズ目ですね。

 

K:
では、ここで色の変遷を振り返ってみましょう。
まずは、2007年2月に発売された最初の「ウキハシ」は、
「墨」「朱」「からし」「乳白」「あさぎ」の全
5色です。


*2007年2月に発売した「ウキハシ」。(左上より)  墨、朱、からし、乳白、あさぎ の全5色

 

K:
続いて2009年5月に、最初の「朱」と「乳白」に
「茄子」「鉄紺」「栗」「抹茶」「黄」「桜」の6を加え、全8色で販売されました。

 

小林さん:
ここまでは、すべて「和名」で、日本の伝統色から選んでいます。

 


*2009年5月に発売した「ウキハシ」新色。 (左上より)茄子、鉄紺、くり、抹茶、黄、桜 の6色が追加された。


K:

ちょうど同じタイミングで、竹で作られた「ウキハシ 竹」も発売されました。
通常サイズの他にも、小さめサイズのmini や 菜箸への展開もありましたね。

 

小林さん:
菜箸こそ食卓に置きたい、という想いもあったのですが、
「ウキハシ 竹」の生産が終了となり、一膳大事に使わないでケースに入れてとってあります(笑)。


*2009年5月には「ウキハシ 竹」も発売(現在は生産終了)。
 通常サイズのほか、製品デザインの初期段階にあった「菜箸」や「ミニサイズ」の展開も行われた。

 

K:
次いで、3シリーズ目(2012年4月)は特に人気の高いカラーに絞り、
「桜」「朱」「黄」「茶」「緑」の5色展開となりました。

販売期間が一番長いので、この色展開の「ウキハシ」をご存知の方が多いのではないでしょうか。

*3回目のカラーリニューアル(2012年4月) (左上より)桜、朱、黄、茶、緑の全5色で発売 (現在は生産終了)

 

K:
そして、今回(2020年10月)のカラーリニューアルでは色の展開を一新し、
「墨」「あさぎ」「よもぎ」「薄紅」「白」「からし」の全6色になりました。


*今回のカラーリニューアル(2020年10月)。全体的に落ち着いた色調と質感に仕上がっている。
 (画面上より)墨、あさぎ、よもぎ、薄紅、白、からし の全6色展開。カラーも和名に変更された。

 

小林さん:
基本的には、最初の「ウキハシ」の時から、鮮やかなものよりも少し深みのある色合いを選んでいて、
リニューアルするたびに「もっともっと鈍く」って。
今回は特に全体的に落ち着いている色合いで、デザイナーとしては、
これまでの中でダントツにいいなと思っています。

 

 

食べもの に 触れる色と質感

K:
色の深みや鈍さを追及されていたということですが、
その中でも特に意識していることはありますか。


小林さん:

“「食べもの」と合わせて違和感のない色合い“ にしなくては、と考えています。

 

K:
食器ではなく、食べもの?

 

小林さん:
そうですね。「食べもの」。
もちろん、食器や周りの環境に合わせることも大事ですけれど、
箸が直接触れるのは「食べもの」なので、その点を重視しています。

 

K:
なるほど。
ちなみに今回の中では、どの色が一番お好きですか。

 

小林さん:
「墨」です。
色合いもですが、いい意味で樹脂感があまり無く、質感がすごくいい。

 

K:
今回のカラーリニューアルに合わせて成形方法も変更しているので、
質感もこれまでのものと変わりましたよね。

 

小林さん:
表面が少しざらついていて、紙のような乾いたような質感がありますね。
「食べもの」に触れた時の感覚が良さそうだと思います。

 

K:
先ほどもお話がありましたが、テーブルコーディネートというと食器に合わせて
カトラリーを選ぶイメージがあったので、「食べもの」に合わせて色を選んだり、
触れた時の感覚まで想像するということが、とても新鮮に感じます。

 

小林さん:
確かにそうかもしれませんね。
そういう意味でいうと、今回はこれまでよりも、食べ物以外の空間(食器やテーブルなど)にも
溶け込む、馴染むような色の選び方もしているかもしれません。

 

K:
その変化は、2007年当時と今の生活環境の違いなども影響していますか?

 

小林さん:
そうですね。実際の生活の中で何が直接的なきっかけになったかというのは難しいですけれど、
家族が増えてテーブルのサイズが大きくなったり、木製の家具を使うようになったり、
そういう普段の生活変化の積み重ねが、デザインに影響を与えているということはあります。

だから、今回のカラーリングに関しては「この箸が空間の中で違和感なく存在できるようにしたい」と
無意識のうちに考えて出た結果なのかなと思います。

 

K:
ということは、今後30年、40年後にさらに生活環境が変わった時には、
選ぶ色や質感も変わっていそうですね。

 

小林さん:
そうですね。黒一色とか(笑)。

 

K:
何があったんだろう! 気になりますね(笑)

 

 

使う人にとっての「ウキハシ」

K:
今回、小林さんのデザイン・プロダクトを扱っているショールームにお伺いしていますが、
ご自身で接客されることはありますか?

 

小林さん:
もちろんありますよ。まず自分でデザインをしっかり伝えたいという思いがありますし、
どういう人が使ってくれるのかということを知ることや、
使う人と会ってコミュニケーションをとる、
ということはすごく大切だと思っているので。

 

K:
「ウキハシ」については、どういうお話をされますか。

 

小林さん:
「ウキハシ」に関しては、皆さん早い段階で”先端が浮いている”ということに気がついてくださるので、
製品説明というよりはデザインのきっかけなどを話すことが多いですね。

 

K:
実際に「ウキハシ」を使っている方から感想など届くことはありますか。

 

小林さん:
「お箸の持ち方がきれいになりました」というメールをいただいたことがあります。
おそらく、持ち上げる、揃えて置くなどの所作や、箸に対しての意識が変化したことの結果だと思います。

 

K:
確かに。KONCENTでも「ウキハシを使うようになってから、他のお箸も丁寧に扱うようになった」
というお声をいただいたことがあります。
最初のデザインコンセプトである “丁寧に箸を使うといった作法を導くサインデザイン” が
生きている証拠ですね。

 

 

K:
近年、和食ブームの影響もあって、海外でもお箸を使う方が増えていますよね。

 

小林さん:
そうですね。特にヨーロッパの方は、正しい箸の持ち方を習って意識した上で使っている方も多く、
日本人よりも上手に使っているな、と感じる時があります。

 

K:
「ウキハシ」が海外で使われているのを見たことはありますか

 

小林さん:
僕は海外に行く時は、大量に「ウキハシ」を持っていってプレゼントするんですけれど、
皆すごく喜んでくれますし、家族で使ってくれている写真も届きます。

先日もバレンシア(スペイン)でオープンするお寿司やさんの内装をデザインしていたので、
そのお店にもウキハシを納めて、使ってもらっています。

 

K:
お箸は “人を繋ぐ” 縁起ものとして知られていますが、「ウキハシ」は日本だけではなく、
まさに海外への文化の架け橋にもなっているということですね。

 

 


これからのデザイン

K:
実は「ウキハシ」は今回のリニューアルとは別に、新たな展開を予定しています。

 

小林さん:
最初に想定していた「木製」が!

 

K:
はい、ついに、製品化されます!
今は試作の段階ではありますが、2021年の発売を目指しています。

 

小林さん:
今回リニューアルした樹脂製「ウキハシ」の色や質感もとてもいいけれど、
「木製の箸を使いたい」という方もいると思うので。今から仕上がりが楽しみです。

 


*念願の「木製ウキハシ」のサンプルを手に取り、質感を確かめる小林さん

 

K:
「ウキハシ」以外で、今後予定されていることはありますか。

 

小林さん:
ありがたいことに、毎年新しいジャンルのことに挑戦をさせていただける機会があって、
今も、これまでにない商品でデザインを進めているものがあります。

もちろん経験が当然足りない場合もありますので、新しい依頼をいただく度に、その都度、
開発担当の方などに協力してもらいながら、勉強しているという感じです。
ですが、どのジャンルの仕事においても一番大事なのは、
”今私たちが欲しいと思えるものを追求すること”ですね。


K:

なるほど、常にアップデートをしているということですね。
ちなみに、今後挑戦してみたいジャンルはありますか。

 

小林さん:
食器のデザインをやってみたいです。
陶磁器もそうですし、日常で使うタンブラーやステンレス製のものなど、
多くの方に使ってもらえるものを作りたいです。

 

K:
小林さんがデザインする食器、楽しみですね。
完成した際には、ぜひ「ウキハシ」と合わせて、いろいろな方に使っていただけると嬉しいです。

本日は貴重なお話ありがとうございました。

 

 

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*「木の浮き箸」
インタビューの中でも話題にあがった木製のウキハシ。
2021年2月、ついに発売されました。詳細な製品情報はこちらからご覧いただけます。
(2021/2/5追記)