マスクノイエ リリース記念 特別対談

デザイナー

GentaChie

gentachiedesign Inc.

デザインプロデューサー

HIDEYOSHI NAGOYA

h concept co.,ltd.

SCROLL

「マスクノイエ」 リリース記念 特別対談

憂鬱な時にこそ
求められ、そして
生まれたデザイン。

『マスクノイエ』のリリースに際して、そのデザイナーであるゲンタチエ(金山元太+金山千恵)のお二人をお招きし、プロダクトが誕生するきっかけ、完成へと至る経緯、そしてそこに込めた思いを中心にお話を伺いました。またモノづくりに携わる上での姿勢や具体的なアプローチ、さらに「暮らしに即したデザイン」を信念とするお二人が、コロナ禍を経てすっかりと変わってしまった日常生活の中で、今後どのようにデザインと向き合っていくのか。20年近くにわたってゲンタチエとの関係性を深め続けてきたアッシュコンセプト代表の名児耶が、カジュアルな雰囲気の中で迫っていきます。

Profile プロフィール

GentaChie

デザイナー

GentaChie(金山元太+金山千恵)

gentachiedesign Inc.

共に桑沢デザイン研究所を卒業。2004年株式会社ゲンタデザインを設立。2019年ゲンタチエデザイン株式会社に社名変更。家庭用品、服飾品、医療機器、住宅設備機器からグラフィックデザインまで幅広い分野のデザインを手掛ける。グッドデザイン賞、ドイツiFプロダクトデザイン賞受賞など他受賞歴多数。

HIDAYOSHI NAGOYA

デザインプロデューサー

HIDEYOSHI
NAGOYA

h concept co.,ltd.

Theme 01

まず行為ありき。
その周りの“余白”を
デザインする感覚。

NAGOYAお二人と最初に会ったのはどれくらい前になるんだろう。たしか『FUROSHIKI-BAG(注)』の時だよね?(注:2004年にアッシュコンセプトより発売。「フロシキとバッグのいいとこ取り」をしたバッグ。現在は取扱終了)

CHIEもう18年は経っていると思いますよ。

GENTA実は『FUROSHIKI-BAG』より前があるんです。当時、僕と同世代のデザイナーから「アッシュコンセプトの名児耶さんっていう面白い人がいる」と教えてもらって、僕が思い切ってメールを送ってみたら「会いましょう!」と快くお返事をいただきました。でも手ぶらでは行けないから、自分たちの試作品を見てもらおうと思って、ティッシュケースを持っていったんです。

NAGOYAあー、あの時か! 僕はそこで「ごめんなさい」しちゃったんだよね。そしたら他のメーカーで大ヒット商品になっちゃって(笑)

CHIEでもその時に名児耶さんに見てもらったものは、下の部分がカーブしているデザインで、その後に商品化されたものとは形が違うんですよ。

NAGOYAあの時からのお付き合いになるんだね。おそらく2003年くらいじゃないかな。僕たちの会社もスタートしたばかりで、浅野泰弘さんの傘立て『SPLASH』やパスキーデザインの『アニマルラバーバンド』、あと数点しか商品がなかった時だね。

GENTAその時すでにアッシュコンセプトとお仕事をされていた浅野さんや梶本博司さんとは我々も親しくさせてもらっていたので、羨ましいなと思っていて。「僕たちもいつかは『+d』で!」という強い思いはありましたよ。

今回の鼎談はアッシュコンセプトの本社にて。テーブルには『マスクノイエ』のサンプルが並びます。

NAGOYA今お二人は、どういった方法でデザインを進めているの?

CHIE案件ごとに担当を分けているわけではなくて、同じプロジェクトを2人で進めています。たとえば『マスクノイエ』だと最初のアイデアは彼。私はアイテムづくりが進んでいくのをチラチラ見ながら「ここはもっとこうした方がいいんじゃない?」なんて言いつつ両方のアイデアを積み重ねていきました。逆に『FUROSHIKI-BAG』は私から。そこに彼の意見が足されていくカタチで進めていきました。

GENTA2人の意見が一致することもあれば、そうじゃないこともあります。そうじゃないことの方が多いんですけどね。その時は激しく言い合うことも(笑)

NAGOYAそうやってデザインを進めて、いつ「ここが到達点だ!」「これで完成!」ってなるの?

CHIEどこかで納得感というか「それしかない」と思えるタイミングが来るんですよね。

GENTAそうですね。そこに個人としてのエゴみたいなものはなくて、お互いに「相手の言うことが正しい」と思ったら、それを正解としていますね。

NAGOYAなるほど。客観的な意見をぶつけ合いながら、一緒に最終到達点を見つけ出しているんだ。ワガママや、カッコつけたくなりがちですが、 でもお二人みたいに、アドバイスをしてくれる人が近くにいると、必ず正しい答えに辿り着けるね。

自身がファンだと語るお二人との対談に、名児耶の語り口には冒頭から熱がこもります。

互いの意見を積み重ねることでアウトプットの質を高めていくゲンタさんとチエさん。

CHIEあとはジェンダーを超えて、多様な考え方を持っていることも大切ですね。例えば商品開発の場で、打ち合わせにいるのは男性ばかりのことも多いんです。そうすると、使う人の気持ちから離れた議論になることもあるので、そこを私が“おばちゃん目線”で突いています(笑)

NAGOYAでもそれはとても大事だね。みんなが共鳴してくれるデザインって、いわゆるおばちゃん的な感覚を持っていないと出ないから。それもあってか、ゲンタチエの製品ってすごく生活と近いんですよね。他のデザイナーだと「これは何をするもの?」みたいな突拍子のないものも多くて、もちろんそれがワクワクさせる要因になることもあるけど、お二人のものはそうではなくて、ストーンって腹落ちします。いつも「これはみんなが共鳴・共感するよね」っていうポイントを突いてくるんだよね。

CHIEできるものなら、私たちも『+d』で見られるような、キャラクターが際立った面白いものもやってみたいんですが、器用じゃないので……

GENTAやはりちょっと芸風が違うというか(笑)

NAGOYAいや、それでいいと思います。お二人の場合は生活の中で「人はどんなことに困っている?」とか「なぜこういうものがないの?」といった部分をきちんとチェックして、そのチェックシートをすべてクリアしたものだけを人に見せているというか。そこをしっかりと積み上げた企画しか出てこないのがいいところだから。

CHIEそれは私たちの修行時の名残りもあるでしょうね。2人ともクライアントから依頼された細かいオーダーをすべてクリアしていくトレーニングを散々してきています。彼はIDKデザイン研究所(現:喜多俊之デザイン研究所)で6年間にわたって下積みを経験しているし、私もプロダクトの世界に来る前には、コピーライターとして勤めていました。

GENTA僕たちのデザインにおいて「使いやすさ」っていうのは大前提であり必須条件です。というのも30年ほど前かな? 「デザイナーがつくったものは使いにくい」と言われた時がありました。だから僕は初めから「そうじゃないモノづくりができないかな」って考えていたんです。「カタチばかりを追い求めることで、結果的には使いづらい」とは言われたくない気持ちで、ずっとこの仕事をやってきました。

NAGOYA確かに美的造形性だけがデザインだと思われていた時があって「デザイン=カタチ」という誤解を含みながら伝わっていった歴史があります。とはいえ、やはり造形的にもカッコよくないとデザインと言いたくない。その点で、お二人のアイテムはそこのハーモニーがすごいんだよね。

普遍性を帯びたシンプルなディティール。お二人のデザインの本質はそこにあります。

CHIE実際「デザイン=装飾」みたいに認識している人は多かったと思いますね。でも私たちはそういう手法はやりたくありません。むしろ最小限の要素をつなぎ合わせてカタチにすることを大切にしています。

GENTAデザインのトレンドって建築の世界からくることが多くて、これも30年以上前ですけど「イデオロギー」が強く叫ばれた時がありました。『◯◯◯◯イズム』みたいな言葉が飛び交っていて。そんな考え方をベースに造形を追求していくから、どうしても使いやすさとは乖離してしまったという経緯もありますよね。しかし我々の世代にその時の傾向を更新したいというデザイナーが出てきて、そこでやっと生活者目線が大事にされるようになったと思います。

NAGOYAじゃあお二人も時の流れがあって、その中で求められているデザインをしているんですね。

GENTAそういう意識はありますね。ただそれと同時に「長く売れてほしい」という思いもあって。

CHIEそれもあるよね。普遍性というか。古くならないもの。

GENTAそうそう。だからディティールはなるべくシンプルにしています。本当はそういった部分にこそ、時の空気感とか俗っぽさ、さらに作家性みたいなものが表現されて、それはそれでデザインの“美味しいところ”ではあるけれど、そこはグッと我慢して(笑)。そうすることで10年、20年と選ばれるものになっていくと思っています。

NAGOYA確かにどちらの良さもあるよね。シンプルで普遍的なもの、もしくは時のトレンドを追ったもの。いずれにしても大事なのは、モノと人との関係がきちんとできているかっていうことじゃないかな。それが構築できていれば、結果的に長く使ってもらえると思います。

GENTAそれは同感です。例えば『リモココ』においても、まず「リモコンを入れる」という行為ありきでデザインがスタートします。そうすればどのくらいの角度がいいのかを考える必要が生まれてくる。そういったことをすべて解決していけば、必ず使いやすいものになりますから。つまり「リモコンを入れる」という行為があって、その周りの“余白”をデザインする感覚なんです。そんな風に言うと、カッコつけているみたいですけど(笑)

NAGOYAでもその通りだよね。その上で、もしカタチが古く感じてくるのであれば、そこはまた改善すればいい。僕はそう思っています。「今はこれが素敵」と思うことをチャレンジして、それが違うと思ったら、また変えていきながら延命するということでいいんじゃないかな。だから僕は「やらない」っていう選択よりも「やろう」っていう決定をどんどんしていきたいと思っています。

僕たちのデザインにおいて「使いやすさ」は 大前提であり必須条件です

大事なのは、モノと人との関係が きちんとできているかっていうこと

Theme 02

みんなが憂鬱な時に
生み出された
生活を楽しめるプロダクト。

NAGOYA『マスクノイエ』はどういうきっかけでつくろうと思ったの?

GENTA最初は個人的なニーズからです。コロナによってマスクが欠かせない生活になって、これまでは考えもしなかった「マスクをどこに置くのか」という問題が生じます。それってはじめは自分の家だけの問題だと思ったんですけど、「いや待てよ」と。我々が悩んでいるってことは、きっと世の中の人たちも同じように悩んでいるだろうと想像できました。ネットで調べてみると、やはり皆さん悪戦苦闘していることが分かって。

CHIEそこからはじめは彼がマスクを引っかけるスタンド状のものを針金でつくったんですよ。それで機能的には問題なかったんですけど、ただちょっとカッコ悪いなって(笑)

GENTAそうなんです。針金のスタンドでも自分が困っていることは解決できました。でもいかんせん見た目が悪い。そこでただ引っかけるだけではなくて、便利にかつ美しく収納できるものはないかなと考えはじめます。

NAGOYAじゃあ日々の暮らしの中で、自分たちが困っていることが作品に反映されることが多いんだ。

CHIEはい。そういうことがほとんどですね。

GENTA『リモココ』もそうでした。自分の家が散らかっていたから、リモコンの置き場所がほしかったんです。

CHIEティッシュケースの『STAND!』(注)もそうだよね。自分たちが狭い部屋に住んでいたから、必然的に「立てて使う」という発想にいたったんだと思います。特に日本では狭いところに住んでいる人が多いから、共感してもらえたのかも。(注:2005年にマークス・インターナショナル(株)より発売。縦置きのティッシュペーパーホルダー)

GENTAうん。「省スペース」はデザインの発想において重要なキーワードになるよね。

代表作のひとつである『リモココ』も、暮らしのニーズを的確に捉えたアイテム。

貴重なラフスケッチをご持参いただきました。特に重要なのは3つ目のステップ。

GENTA針金だとカッコ悪かったので、次は額縁のようなフレーム型を思いつきました。そうすれば横からは見えません。さらにその次のステップが重要で、そのフレームの真ん中に2つ折りのマスクを引っかけると、左右の上の部はいらないことに気づきます。その部分を削ることで、家のカタチが生まれました。

CHIE不必要な部分は削るというのは、私たちのデザインにとって非常に大切な考え方なので。

GENTA家のカタチになったことで、コロナ禍で叫ばれていた「ステイホーム」と結びついて、アイテムに強い意味も生まれたんです。

NAGOYAってことは、もともと家にしようと思ったわけではなくて、削った結果としてカタチが生まれてきたんだ。

GENTAそうなんです。側面に穴が空いているのも、複数個を並べた時に指を引っかけて動かせるようにするため。文房具のファイルにも側面に穴が空いていますよね。あれと同じです。だから一応すべてのカタチに意味があるんですよ。

NAGOYAこの穴はそういうことだったんだね。僕は換気用だと思ってた。

GENTAそれも兼ねています。

穴を用意することで並べた時に容易に引き出せる。生活者視点の発想が嬉しい。

実際にマスクをかけると、上部が四角である必要がないことが分かります。

であれば、削る。その結果「家」型になったという必然をともなったストーリー。

GENTAまたこの『マスクノイエ』を使うことで、マスクに自分を投影することもできるんです。どういうことかと言うと、例えば会社から帰って来たら「ただいま」とマスクも家に入れる。出かける時には「行ってきます」と言ってマスクも家から出す。マスクの出し入れって本来は殺風景なものだけど、置き場所としての家があれば、その行為を通して気持ちの余裕ができて少しほっこりしたり、楽しんだりできるんじゃないかなと思って。

NAGOYAまさにその通りだよね。僕も「コロナの野郎、世の中をこんなにめちゃくちゃにしやがって、チクショー!」「このまま負けてたまるか!」ってずっと思っていて。そんな中でお二人からこれを見せていただいて、すぐに「やった!」と感じたんです。みんながストレスを抱えて、憂鬱になっているこんな時でも、多くの生活者と一緒に楽しんでもらえる素晴らしい商品をデザインしてくれる人が出てきたんだと感動しました。

GENTAありがとうございます。あとこの商品はマスクを美しく隠すことを目的につくられたものなんですが、壁などに逆向けに付ければ額縁のようにも使えます。というのも今って自分のお気に入りの布を使ってマスクを自作する人も増えましたよね? そういう人たちからするとマスクは作品です。だから見せる収納もできるようにしました。隠すため、見せるため、両極の使い方ができます。これもまたマスク生活を楽しむ一つのきっかけになるんじゃないですかね。

壁につければ、「収納」兼「額縁」に。使い方にも“余白”があるのがポイント。

GENTAさらにもう一つポイントがあって、この商品は5色展開を想定しています。それにも理由があって、家庭内でのマスク収納を調べていると、イニシャルを書くなどして、お父さん用、お母さん用、お子さん用……と分かるようにしている家が多かったんですね。だから色で識別ができて、かつ4人家族でも色を選べるように5色でお願いしました。あとはそこに名前を書いてもいいし、例えば窓に顔写真を貼ってもいい。余白を残したデザインにしたので、好きなようにカスタマイズできます。

NAGOYA家だけに、買った人それぞれが自由にリノベーションができ、マイマスクハウスが産まれるんですネ!それに誰の家かが決まるということは、これを見るだけで「あ、太郎は帰っているな」みたいなことも分かるってことだよね。

GENTAそうなんです。「お父さんはまだ残業だな」とか。それで言うと、煙突に見える部分も重要で。もともとはゴム紐が落ちてしまって困っていて……。

CHIEそうそう。落ちないように引っかける部分をつくったら「煙突に見えるね」って。

NAGOYAうちのスタッフからも「内側にマスクをぶら下げるための棒をつければ、すべてが隠れるからキレイなのでは?」っていう意見が出ていました。でもゲンタさんに「外からマスクの紐が見えることで、家族の誰が帰ってきているかが分かるから」って言われて。そこまで考えていたのか! って驚きましたよ。その部分も煙突に見せることが目的だったわけではなくて、きちんと機能的な役割があって、それが見た目的な楽しさにもなっているなんて、すごいね!

煙突に見える突起部分は、実はマスク紐のすべり止めという大事な役割が。

「お父さんはもう帰ってきてる?」なんて、玄関で確認するのが楽しみになりますね。

「あらゆる面から隙がない製品」と、名児耶もうっとり。

GENTA実はこの『マスクノイエ』にとりかかる以前に、僕らはとある大手メーカーからの依頼を受けて、ずっとマスクの開発に携わっていたんです。日本、そして海外で売られているマスクをタイプ別に取り寄せて、研究していました。もう「マスク博士」と呼んでもらっても大丈夫なくらい(笑)頭の中はマスクだったんです。

NAGOYAサイズ感やフィット感など、マスクのことをイヤというほど勉強をしたからこそ生み出されたプロダクトかもしれないね。

気持ちの余裕ができて少しほっこりしたり 楽しんだりできるんじゃないかな

きちんと機能的な役割があって それが見た目的な楽しさにもなっている

Theme 03

デザインを通して
生活を美しく、豊かに、
そして楽しく。

NAGOYA今回、チャリティーキャンペーンとして、10名のアーティストがこの『マスクノイエ』をキャンバスにして自由に表現してもらうことにしました。クリエイターたちが一緒に遊んでくれることでどんな化学反応が起きて、どんな作品が生まれてくるのか、僕自身、すごくワクワクしているんだ。

CHIEこの企画を聞いた時は、とても面白いと思いましたね。

GENTA僕も最初から買った人によってカスタマイズされるプロダクトと思っていました。例えばマスキングテープが流行っているし、それは絶対に誰かやるだろうなと。だからこそ名児耶さんからそのお話をいただいた時は、すごくいいなと思って。ほんの少し手を加えるだけで印象はガラリと変わるでしょうし、僕たちも今から楽しみにしています。

NAGOYA最初は10人のアーティストから始めるけれど、その後はみんなが自分でカスタマイズすることで世界中で遊んでくれたら……、なんて妄想を持っているんです。

GENTAうん。どんどんと火がついていくと面白いですよね。

NAGOYA例えば2歳くらいの子どもが少し絵を描くだけでもアーティストになれるんだから。そんなことが世界中で広がったら「コロナなんて、やっつけられる!」っていう気運が高まりそうだよね。

GENTAはい。憂鬱な気分を吹っ飛ばす力になれれば嬉しいです。

NAGOYAお二人がゼロからイチを生み出してくれたんだけど、そこに世界中のみんなが掛け算や足し算をすることで、百にでも千にでも万にでもなる可能性があるプロダクトだから。

クリエイターが参加するキャンペーンを企画した名児耶にも満面の笑みが溢れます。

お話を聞くことで、お二人の今後の活躍がさらに楽しみなものとなりました。

NAGOYA僕たちはデザインとモノづくりが大好きな会社だから、商品を通じて世の中を楽しくしたり、元気にしたりできないのであれば、会社としての存在価値がなくなってしまいます。そんな中、コロナによって世の中がガラリと変わってしまった時に、この『マスクノイエ』という商品に出会えたのは本当に嬉しかった。ここから僕たちが全力投球することで、コロナ禍の生活を楽しむためのきっかけをつくっていきたいですね。

CHIEこの商品は、企画している時から「他のメーカーではなく、絶対に『+d』で商品化したい!」「名児耶さんにプレゼンしに行こう!」って決めていたんですよ。というのも、名児耶さんならこの商品に込めた思いを理解してくれると思ったので。

GENTAプレゼンに向けて資料をつくったんですけど、試作品を見てもらった瞬間、名児耶さんに「もう説明はいらないよ」「ぜんぶ分かったから」って言っていただいて(笑)

NAGOYAそうだったね(笑)。最初に見た時からビンビンきました。はじめて『アニマルラバーバンド』を見た時に「すごい!」と思ったのと同じくらいのインパクトでしたね。見た瞬間にワクワクした。この製品を見て改めてお二人に出会えてよかったと思いましたよ。だから他のどれよりも最優先で発表して、コロナでやられた憂鬱な世界の気持ちをチェンジできるような取り組みをしたいと思って、すぐに商品化に向けて動き出しました。

GENTAありがとうございます!

NAGOYAいつの時も小さな子どもって『シルバニアファミリー』が好きでしょ? やっぱり“置く道具”ではなくて、“置く家”になった瞬間に愛着がぜんぜん違ってくるよね。そもそも恩恵はとても大きいはずなのに、わりとひどい扱いをされがちなのがマスク。それをここまで大切に考えて家に入れてあげるっていう、とても温かい表現だと思います。今後もしコロナが落ち着く時が来たとしても、マスクは洋服の一部のように大切なものになっていくんじゃないかな。だからこそこの『マスクノイエ』も時や流行りに左右されず、ずっと生き残っていく製品になると信じています。

CHIEありがとうございます。私たちはデザインを通して世の中に新しい価値感の提案をしているつもりです。生活を美しく、そしてより豊かにするための道具づくりを日々模索しているので、そうやってずっと使っていただけると嬉しいですね。

NAGOYAそうそう。僕たちもモノをつくって発信しているんだけれど、本当にやりたいのはその商品を使うことでみんなの生活が豊かになって、楽しくなっていくっていうことだからね。

GENTAはい。コロナを経て新しい生活様式が進むにつれて、家の中にあるいろいろな道具や製品一つひとつに対する考え方が微妙に変わっていくと思います。そういった変化を大切に、その時の生活に即したデザインをこれからもやっていきたいですね。

道具や製品に対する考え方の変化を大切に 生活に即したデザインをやっていきたい

この製品を見て改めてお二人に 出会えてよかったと思いました