今回ご紹介するのは、ORISHIKIのデザイナー林篤弘さんです。
林さんは1967年京都生まれ、京都精華大学を卒業後印刷会社、デザイン事務所勤務を経て、2009年よりフリーランスのプロダクトデザイナーとして活躍されております。
■ご自身がデザインした商品について、思いついたきっかけやコンセプトなどをお聞かせください。
林さん:コンセプトは「折り紙の様に折りたためる鍋敷き」です。 あるキッチン用品メーカーの依頼でシリコン製の鍋敷きのデザインを検討中、紙にデザイン案を作図して原寸大に切り抜いたものをいくつか並べて、その中から没案を抜き出して二つ折りにして横に置いていたのです。その折り曲げた没案シートを見た時にORISHIKIの基本的なアイデアを思いつきました。 でも、その時の依頼は「スタンダードな鍋敷き」だったので折りたたみ案は採用されず仕事場の棚に放置されてしまいました。そして3年ほど経ったある日この案を思い出し、やはり「なんとかして製品化したい」と考え、折り畳んだ時に凹凸面が噛み合う構造を追加等、デザインをブラッシュアップしてアッシュコンセプトさんにご相談させていただきました。
KONCENTスタッフ(以下K):考案されてから長い間眠っていたアイデアだったのですね。ご提案に来てくださった時、本当に無駄がなく、理にかなっている構造にスタッフ全員驚いた事を覚えております。
■ORISHIKIのおすすめの使い方はありますか
林さん:普通にダイニングやキッチンでご使用いただけば良いのですが、折りたたむ事でサイズを変える事ができるので、例えば半分に折って、事務机や勉強机の狭いスペースでティーポットとカップの下に敷いたりもできますし、1/4に小さく折りたたんでキャンプやバーベキュー等のアウトドアに持ち出す事もできます。
K:コンパクトサイズに折りたたんでも鍋敷きとして利用できるという所がとても素晴らしいです。
■ KONCENTショップで印象に残っているものがあれば教えてください。
林さん:子供の頃から物作りが好きで、機械や道具の外観の美的な部分と構造的な面白さの両方に興味がありました。 美大ではタブローを専攻して毎日絵を描いていたのですが、研究室の裏で自分や友人のバイクの分解や修理を常にしていて、教授からは「おまえは絵描きになるのかバイク屋になるのかどっちだ!」と怒られたりもしていました。結局そのどちらにもならなかったのですが、自分自身の興味を満たせる仕事としてプロダクトデザイナーという職種があると知り、現在に至ります。
K:分解するのが楽しいの、とてもわかる気がします。構造を知るとわくわくしますよね。 「興味を満たせる仕事」というのがとても良いですね。仕事も楽しくやりたいですね!
■ 自分を一言で表すと?
林さん:ざっくりとマメな人。 K:ほう!最終的にはマメなのですね!笑
林さん:最近、平日は依頼されたデザインをするのですが、休日は自主企画のデザインに取り組んだりして、誰かに誘われない限りずっと仕事場に籠もってしまっています。ちょっと良くないですね。 お気に入りの場所、ここ数年ご無沙汰していますが沖縄の八重山諸島。「きれいなビーチでボーっとしたい」と言いつつ現地に行ったら写真を撮り歩いたり、泳いだり、砂浜に意味も無く穴を掘ってみたり、木に登ってみたり等々してじっと出来ないんですけど。
K:これは~!きれいすぎます!こんな青い海がやはり沖縄にはあるのですね~! 穴掘ったり木に登ったりも楽しそう。 林さんの撮影された写真もとても素敵です。
林さん:仕事のアイデアは、クライアントさんと打ち合わせしている時やその帰り道に思いつく事が多いです。でもそれで思いつかない時は仕事場の机に齧り付いて夜中まで資料を整理したりサムネイルを描き散らしたりして頭の中をごちゃごちゃの情報でいっぱいにして、そして寝るんです。そうすると翌朝、寝覚めかけの布団の中で昨夜悩んでいた事が不思議なくらい簡単にアイデアが出る事が良くあります。
K:人間って寝ている間に情報が整理されているんですよね。(学生の頃、一夜漬けせずちゃんと寝なさいと言われていたのを思い出しました笑) 壁にとりつける壁って便利そうですね。参考にさせて頂こうかなとこっそり思いました笑
林さん:フォルムの美しさと構造的な面白さ、その両面からのアプローチというのが僕自身のデザインスタンスなので、それはそのままに、手にした人が笑顔になる様な製品を作り続けていきたいですね。それから、2014年のミラノデザインウィーク出展をきっかけにイタリアのメーカーともコネクションができたので、今後は日本国内だけでなく海外企業との仕事も進めていきたいです。
K:ORISHIKIは構造的な面白さもありますが、実際に手で触ってみると、折り畳む時凸凹が噛み合う触感がとても気持ちよくて、思わず笑顔になってしまいます。これからもそんなプロダクトが林さんから生まれることを楽しみにしております! とても内容の濃いインタビューになりました。お答え頂きありがとうございました!
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