デザイナーinterview:小野 舞さん

 

 

今回は、アニマルブックマークのデザイナー、小野舞さんがゲストです。普段はイラストレーターとして活動されている小野さんの、作品に対する姿勢や絵に関するエピソードなども伺ってみました。

 

くりくりとした丸い目が特徴の動物型ブックマークは、2004年の発売から現在に至るまで根強い人気を保っています。

■アニマルブックマークはどんなコンセプトから生まれたデザインですか?

小野さん:アニマルブックマークは、多摩美術大学でアッシュコンセプト代表の名児耶さんの授業でのワークショップ「毎日の生活を楽しくする日用品」をお題に生まれた商品でした。
ガラス製の目と革で出来た、しっぽが長く伸びた動物の栞。ささやかな物だけど毎日を少し変えるスイッチのような、嬉しいプレゼントのような物になればいいなと思って作りました。
それぞれの動物を主人公にして、彼らの日常を切り取ったようなショートストーリーがおまけに付いています。

 KONCENTスタッフ(以下K):アニマルブックマークはプレゼントにご購入いただくケースもけっこう多いんですよ。じつは私も友だちにあげたことがあります。小野さんの願いはたぶん、日々達成中です。笑
ストーリーブックの世界観が好きという意見もよく聞きますね。じつは社内には小野さんファンが多いのです。

■KONCENTショップで好きな商品があれば教えてください。

小野さん:「こち」シリーズの商品が好きです。
贈る・祝う という気持ちというか、行為って大切にすべきだなぁと最近思います。
相手を思った時間を形にして伝えるって素敵な事だな、と。
赤と白だけの線がとてもきれいです。

K:「こち」は1回目のインタビューのゲストだった浅野さんのデザインですね。
日本の文化にある「礼」の形を、デザインの中にきれいに残してあるところが素敵です。
それにしても、「相手を思った時間を形にして伝える」って、名言ですよ!いただきます。

■ 絵を描くことに興味を持ったきっかけは?

小野さん:きっかけらしいきっかけは無いのですが・・そういえば、小さい頃父親がよく美術館に連れて行ってくれました。帰りに、ミュージアムショップでマルマンのクロッキー帳を買ってもらえるのが嬉しくて。あの、OとQがピンク色に塗られたクロッキー帳。実はそれを目当てについて行っていました。

 K:小さな頃から絵を描くのが大好きだったのが伺えるお話しです。きっと日常の中にとても自然な形で絵があったのでしょうね。小野さんの描く絵がのびのびしているのはそのせいかもしれないですね。

■最近凝っていることはなんですか?

小野さん:最近はコーヒーをよくいれるようになりました。そんなに沢山は飲まないのですが、一連の作業が、気分転換になるので・・。近所に、かさい珈琲という小さなコーヒー屋さんがあってそこに豆を買いに行きます。お店の人たちがとっても素敵で、気張らずに本格的なコーヒーを味わえるので、とっても気に入っています。家族もコーヒー好きになって、高校生の妹までブラックで飲むようになりました。
みんな酒も煙草もやらないので、唯一の贅沢です。

K:以前そのお店のコーヒーを弊社に送ってくださいましたね。ありがとうございました。
とても良い香りで美味しくて、皆でどんどん飲んでしまい、3袋もいただいたのに2~3日でなくなってしましました。
HP http://www.kasaicoffee.com/ [外部リンク]

■自分をひと言で表すと?
小野さん:「天邪鬼」かな・・
小さい頃からよくそう言われていました。
周りが白だと黒、右と言われたら左・・
そういえば、中学生の頃一人だけ違う学校の制服を着て通っていました。
制服を買いに行った時、他の学校の方がいいデザインだと思ったから好きな方を買ったんです。
今思うと、皆が着ていた物のほうが素敵で、恥ずかしい思い出です。

 

K:そんなことがあったなんて、想像がつきません。笑
そういえば、浅野さんも天邪鬼なところがあるとインタビューのときに話題に上っていました。意外な共通点を発見したかもしれないですね。

■よく行く場所・お気に入りの場所は?

小野さん:自分の住む藤沢や鎌倉をうろうろしている事が多いです。
線路沿いにあるガレージや、古い鉄工所の建物をそのまま使った家具屋さんや、フィアット専門の車屋さんなど、買い物はしないのですが、場所とか建物が好きでよく覗きに行きます。
ガレージで車の修理をただ眺めたり。
フィアットの車屋さんは、店は狭いのに、車も小さいから沢山とめられていて面白いです。
さらに小さいミニチュアカーまであったり・・

K:住みやすそうですし、雰囲気の良いエリアですよね。穏やかで、独特の時間が流れている街という印象があります。



■尊敬するデザイナーやアーティストはいますか?

ディーター・ラムスや、ヤコブ・イェンセンそれから、ルーシー・リーです。
ディーター・ラムスがデザインした、BRAUNのオーディオが好きで、自分でも一台、SK2という真空管ラジオを持っているのですが、音も良い感じでこれ以上ないというシンプルさで。部屋の中で存在感が消えるようにデザインしたそうです。
50年近く前に作られたものが、いろいろな意味で今なお現役という事がすべてを物語っているような気がします。

ヤコブ・イェンセンのデザインした初期の頃のB&Oのオーディオも素晴らしくて、木と他素材の組み合わせのバランスや、文字やマークなど細部の表現もすごく美しくて・・
ぐっとくる要素を挙げればきりが無いほどです。昔に作られたものって、丁寧に作られていて、何しろ信頼できます。中身や裏を見れば見るほど感動するばかりです。

K:60~70年代のデザインは、今でも新鮮で良さを再確認してしまうものが多いですよね。
無機質なだけでない温かみがある気がします。
BRAUNのオーディオは現在では生産されていないのが残念ですね。
Apple社のデザイン理念もディーター・ラムスに強い影響をうけているとききます。彼が完成させたデザインの原則は、時代が変わっても引き継がれていく大切なことなでしょうね。
ルーシー・リーさんの作品が持つ淡くやさしい印象は、小野さんの印象ともなんだか通じる感じがします。

 

■今後の展開について教えて下さい。
小野さん:今は、新しく物を作る事に戸惑いを感じてしまうような時代ですが、人は良いイメージを作り出せなくなるときっと生きていけないのだと思います。
悲しみや不安な気持ちを見る人と共有することも出来るけれど、
自分は表現として、いつでも幸せなものを作っていたいと思っています。
普段絵を描いているのですが、やっぱり美しい絵が描きたいと純粋に思います。

 

 

 K:小野さんの絵の世界観にあるやさしさは、前向きなやさしさですね。
今回のインタビューで作品のイメージ通りのあたたかい人だなと思いました。

小野さんのウェブサイト
http://onomai.info/ [外部リンク]
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