Design Story Flowerman Mini (後篇)

+dの新作、花を顔に見立てた一輪挿し「フラワーマン ミニ」。
今回は、フラワーマン・フラワーマンミニのデザイナー 坂本 史(さかもと あゆみ)さんにお話を伺いました。

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日本生まれの フラワーマン ミニ。

KONCENT STAFF(以下、K):
「フラワーマン」はドイツで生まれ、ドイツで育ったというお話でしたね。

今回の「フラワーマン ミニ」は、かなり小柄で3種ありますが、それぞれのポーズはどのように生まれたのでしょうか?


坂本 史さん(以下、坂本さん):
ドイツから日本に戻り、
前回とは違った環境でデザインを進めるにあたり

ただ小さくするだけではなくて、
せっかくなら何か日本の文化を感じられるようなものやエモーショナルなものが作れたら…と考えました。

そうした中で自然と出てきた形が、日本の礼儀作法をモチーフとした
・あぐらをかいた 「安座(あんざ)」
・両膝を揃えた「正座(せいざ)」
・綺麗なお辞儀をした「礼座(れいざ)」
の3種です。


フラワーマン ミニ (左から 安座・正座・礼座)と、フラワーマンミニ スタンディング (立ち)

K:
この3種以外にも検討していたポーズはありますか?


坂本さん:
パッと見てわかるように基本的な姿勢を意識したので、最初からこの3種で考えていました。

あぐらをかいている「安座(あんざ)」だけは手のポーズが何種類もあって、
最初は座禅の時のように指の形が複雑なものも検討していました。

ただ、他の2種と並べたときに違和感がないように、
最終的にはこぶしを足の上に置いている比較的スタンダードなポージングにしました。


K:
ヒト型でデフォルメされたデザインのものは、

腰の部分を表現していないことが多いと思いますが
「フラワーマンミニ」では、しっかり表現されていますね。


横から見たフラワーマン ミニ(左:正座、右:安座)。どちらも腰の部分がきちんと表現されている。


坂本さん:
私自身が体を整える姿勢など和教養について学ばせていただいているのですが
この3種はどれも仙骨(せんこつ / 腰椎4番5番)を意識した美しく、良い姿勢なんです。

人の話を聞いたり、目の前にいる人のことをきちんと感じながら対話するというのも、
実は姿勢を整えないと出来ないことで。

首がシャワーヘッドのように前傾し、顎が前に出しゃばっている状態だと、
首で頭を支えようとする分 脳が不安定になり
フワフワとした思考や妄想が広がり、相手の話を聞くことに集中できなくなってしまう。

それが骨盤の上に頭や首がきちんと乗っかり、安定するとその不安がなくなる。

そわそわする時やなんとなく不安だなと思う時も、
仙骨を意識して反り、背筋を正して、頭を正しい位置に持ってくるだけで一気に落ち着いたりするんです。

実際に身近な人と一緒にやってみてもらえるとわかると思うのですが、
顎が前にでてる状態の時と、姿勢を正して話を聞いてもらった時とでは、
受ける印象が全く違うことが体感できると思いますよ!


K:

畳生活から離れつつある今も、正座やあぐらなどの姿勢が残っているのには、
見た目の美しさだけではない“良さ”があるわけですね。


坂本さん:
なので「フラワーマン ミニ」も、腰を据えているを体現しているというか、

どこか落ち着きがあって、こちらの話をしっかり聞いてくれそうな安心感があります。


K:
そうですね。

こちらにきちんと向き合ってくれているような印象を受けます。

仕上がりも、磁器でこんなに細かい表現が可能なんだと驚きました。
小さいと細部の表現に目が行くので、より技術力の高さを感じますね。


坂本さん:
今回は窯元さんのほうでも何度も試作を重ねていただいたのですが、

こちら側の意図や気持ちを汲んでくださって本当に感謝しています。

私と窯元の職人さんだけではなく、その間に何人も携わっているひとたちがいて、
みんなが完成を目指してやりとりをしてようやく出来上がった形だと思うと感慨深いです。

複数置くことで広がる関係性。

K:
おすすめの使い方はありますか?

坂本さん:
同じ形が並んでても面白いし、ミーティングしているように集まっていても良いし…

やっぱり3体で置くのはおすすめです。

実は最初にこの3種を提案したときに
フラワーマン同士を向き合わせたことで製品化に進んだんですよ!(笑)


3体並べると、なんだかフラワーマン同士の会話が聞こえてきそうです。

K:
そうだったんですか!?


坂本さん:

向き合わせると話してるみたいになって…という事を伝えた時に
確かに話してるように見えるし、面白いですね!
ひとつだけでは成り立たない見せ方ですね!と盛りあがりました。

「フラワーマン」にも言えますが、
1体だけでももちろんかわいいですけど、
複数になることで、関係性をつくれるような置き方ができるのがポイントだと思います。

たとえば安座と礼座をあわせると家臣と家来のワンシーンのように見えたり(笑)

これだけ小さいのでどこにでも置けますし、窓辺や、床の間にもあうと思います。
どれも人に向き合う姿勢なので玄関に置くのもおすすめです。


K:

6月末には3種がセットになったギフトセットもできました。
ぜひ様々な置き方を楽しんでほしいですね。

K:
「フラワーマン」発売後、何か変化したことはありますか?


坂本さん:

変化というより、気づいたことになりますが、
和教養を学ばせて頂くにつれ、人は相手に合わせて演じることができるんだなと感じるようになりました。

お世辞を言うという事ではなく、
間(ま)を読んで、この人だったらこの話し方がいいかな とか

誰もが、その時々でいろんな顔を演じることで
様々な関係が成り立っているんだなと考えると、
なんだか「フラワーマン」の“顔(花)を変える”ということにもつながっているなと。

「フラワーマン」も見る人の状態や気持ちにあわせて変化してくれるというか
こちらの気持ちに寄り添ったり、向き合ってくれるような
あたたかさで包み込んでくれる やさしい存在だと思います。

あとは真剣な姿勢でもあるので、頑張って!とか
きちんと応援してくれるような励ましてくれる存在になるんじゃないかな、と。
いろんな形、いろんな方向からのやさしさがあるプロダクトです。


K:

それでは最後に今後のお話についてお聞かせください。


坂本さん:

「フラワーマン ミニ」もそうですが、今後も和教養に関する何かを発信していきたいです。
形にはこだわらずに様々なアプローチを考えていけたらな、と。

代表者としてひとりの名前が出ているものでも、
後ろにはたくさん携わっている人がいて、
人と人との関係性ですべてのことが成り立っているので、その間の部分を伝えていけたらと思いますね。


K:

貴重なお話をありがとうございました!

 

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