2019年11月、東京・墨田区の製本会社 伊藤バインダリーより、
アッシュコンセプトがデザインプロデュースを行った新作「Notebook」が発売されました。
今回は、伊藤バインダリー代表・伊藤 雅樹さんとアッシュコンセプト代表・名児耶 秀美(なごや ひでよし)の対談の
後篇をお送りします。
後篇では、伊藤バインダリーさんへの工場へ伺い、製本作業の見学をさせていただきました。
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株式会社伊藤バインダリーは、1938年に先々代の伊藤春夫氏が江戸川区に創業したノート製本を手がける紙工所
「白鳥堂」がはじまりです。その後、1957年に墨田区に移転し「伊藤紙工所」を設立。
1982年に現在の「伊藤バインダリー」に社名を変更しました。
3代目を継いだ伊藤雅樹さんが小学生の頃までは、ミシンを使ったノート製本作業を行っており、
家業の手伝いをされていた思い出があるそうです。
現在は、‟中綴じ” や ‟無線綴じ” などの製本と、”断裁加工” をされています。
*中綴じ:紙を折って針金で綴じる製本方法/無線綴じ:背を糊で接着し綴じる製本方法
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*中綴じ製本の様子。針金で綴じられた冊子が次々に仕上がっていく。
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工場に伺った際、ちょうど「ドローイングパッド」の仕上げ作業が行われていました。
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「ドローイングパッド」の仕上げは、断裁機を使い、微調整しながら四辺を切り落としていきます。
この断裁作業を丁寧に行うことにより、紙の断面がまっすぐ滑らかに仕上がるそうです。
*1点1点手と目で確認しながら、ミリ単位の断裁で仕上げる様子。
工場を見学させていただいた後は、伊藤バインダリーさんの事務所で、引き続きお話しを伺いました。
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「Congratulation!!」で迎えられたNotebookの発表
KONCENT STAFF(以下、K):
伊藤バインダリーさんのホームページやSNSを拝見すると、日本語と英語が併記されていますが、
日本国内だけではなく、海外のお客さまも意識して情報発信をされているのでしょうか。
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伊藤雅樹さん(以下、伊藤さん):
これまでの「ドローイングパッド」や「メモブロック」もそうですけれど、
海外の方からの反応が良いです。出荷も全体の7割ほどを占めています。
日本でよく使われる普通の紙の質が、海外の方には ‟普通じゃない” ようです。
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K:
「Notebook」は日本での発売前に、海外の展示会で先行発表されましたが、
どのような反応がありましたか?
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伊藤さん:
アメリカで開催された、‟NY NOW(ニューヨーク・ナウ / 2019年9月)”では、
リピーターのお客さまから「Congratulation(おめでとう)」という言葉を多くいただきました。
これは、新商品を出したことに対してそう言ってくれたのかな、と思います。
それから、リピーターのお客さまが、新商品も購入してくれてたことに驚きました。
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名児耶:
「Congratulation!!」という声掛けは、すごい!!
その人たちは、伊藤バインダリーのファンだね。
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伊藤さん:
ありがたいことです。
お客さまも「新作ができるまで、繰り返し注文することで応援してよかった」と思ってくれたんだと感じています。
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K:
フランスの国際見本市 ‟Maison et object(メゾン・エ・オブジェ / 2019年10月)”ではいかがでしたか。
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伊藤さん:
ヨーロッパでは、日本の紙の品質はもちろん、デザインについての評価が高かったです。
作る時にこだわった‟360°開く” ことや ‟スピン” がついていること、
特に‟色のバランス” に対してすごくいい反応をもらいました。
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名児耶:
グリッドの色のほかにも、見返しの色にもこだわったからね。
そこが伝わったのはうれしい。
*外と内のコントラストが効いた仕上がり。(グレーの表紙の内側はブラック。ブラックの表紙の内側はグレー)
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伊藤さん:
そうした海外のリピーターの方の反応をみて、しっかり続けていこうと思いました。
それと同時に‟次” を期待されていることも強く感じましたね。
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作るひと と 使うひと。それぞれの想いで進化するNotebook
K:
‟次” というお話がでましたが、今後の展開や構想などはありますか?
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名児耶:
実は「Notebook」には、1枚のカードを入れています。
*「Notebook」1冊1冊に入れられているカード。表には作り手である伊藤さんの想いが書かれており、裏側は感想を書いて送れる仕様。
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名児耶:
僕が今一番面白いなって思うのは、
作る側の心と使う側の心が交わるコミュニケーション。
この紙も、作り手側の想いを伝えるのと同時に、
実際に使った人が、作り手である伊藤さんに直接感想を届けるための“ハガキ” としても使える。
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K:
それぞれの想いをつなぐための重要なツールですね。
伊藤さんは、これまで一般のお客さまから感想などを受け取ったことはありますか。
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伊藤さん:
InstagramなどのSNSでコメントをいただいた、ということはあります。
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名児耶:
紙のお手紙が届いたことは?
伊藤さん:
実際に使っている方から直接というのは、ありません。
ただ、実は「Notebook」のきっかけとなったノート(※前編参照)のお客さまからの依頼は、封書の手紙でした。
やはり、紙で届くと重みがありますね。「しっかりやろう」と身が引き締りました。
だから、「Notebook」のハガキも届くことが楽しみです。
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名児耶:
「Notebook」は作って終わりじゃなくて、ここからがスタート。
実際に使ってくれた人の生(なま)の言葉を受けとめつつ、
ちょっとずつ変化を加えながら、永く続けていきたいね。
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全3回でお届けしました、伊藤バインダリー「Notebook」の開発にまつわる対談。
いかがでしたでしょうか。
これからも進化しつづける「Notebook」。
まずはお手にとって、その‟こだわり”と‟技”をご覧ください。
また、すでにご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、
KONCENT各店の「Notebook」コーナーには、小さなメモ用紙のようなものを設置しています。
実は、完成後の検品で、装丁のヨレなどにより、製品としては出せなくなったものを裁断し、
試し書き用として生まれ変わらせたもの。
試し書き用とはいえ、あまりの質の高さに、
KONCENT スタッフ内から「小さいメモ帳として製品化してほしい」という声もありました。
「Notebook」の紙の厚さや質感、グリッドの間隔などを知りたい方は、
ぜひ愛用のペンなどをご持参いただいて、KONCENT各店までお越しください。
そして、もし気にいって使っていただけたら、
ぜひ、その感想を言葉にしてお伝えいただけるとうれしいです。
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*「Notebook」の製品情報については、こちらからご覧いただけます。