Design Story ITO BINDERY Notebook (前篇)

2019年11月、東京・墨田区の製本会社 伊藤バインダリーより、
アッシュコンセプトがデザインプロデュースを行った新作「Notebook」が発売されました。

今回は、伊藤バインダリー代表・伊藤 雅樹さん、アッシュコンセプト代表・名児耶 秀美(なごや ひでよし)に、
出会いからコラボレーションに至るまでの経緯と、「Notebook」へのこだわりや開発秘話を伺いました。

なお、この対談の模様は、前篇・中篇・後篇の全3回でお伝えします。
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出会いから
10
コラボレーションのきっかけは1冊のノート

KONCENT STAFF(以下 K):
最初の “出会い” はいつ頃ですか。
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名児耶:
一番最初にお会いしたのはたぶん2009年頃。
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伊藤 雅樹さん(以下 伊藤さん):
墨田区のものづくりコラボレーション事業の説明会で、
名児耶さんのプレゼンテーションを初めて聞きました。
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名児耶:
そこで伊藤さんは、「典型 (*)」とプロジェクトを始めたんですよね。
完成した製品を見て「なかなか面白いプロジェクトの流れだな」と思いました。
でも、ちゃんと話をしたのは、海外の展示会ですよね。
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伊藤さん:
ご挨拶を最初にさせていただいたのは、2012年。
フランスで開催されている、
国際見本市 “Maison et object(メゾン・エ・オブジェ)”の時です。

典型プロジェクトで製作した「ドローイングパッド」と「メモブロック」を
伊藤バインダリーとして出展していたところに、名児耶さんがいらして。

その後もいろいろな展示会でお会いすることがあって、お話しをするようになりました。
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*典型プロジェクトで開発された伊藤バインダリーの製品。左:ドローイングパッド 右:メモブロック

*典型プロジェクト
 2009年にすみだ地域ブランド戦略の中から発進した「典型的なもの」を作る、見いだすプロジェクト。
 詳細についてはこちらをご参照ください。
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K:
最初の出会いから、約10年の時を経て、今回コラボレーションをすることになりましたが、
どういった ”きっかけ” があったのでしょうか。
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名児耶:
僕もドローイングパッドを使っているんだけれど、
うちのスタッフがミーティングの時A4のコピー用紙にメモを取っているのを見て、
「なんだか、かっこ悪いな」と思ってドローイングパッドを渡したんだよね。
「これだったら、書いているときも所作として良いから」って。
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伊藤さん:
ありがとうございます(笑)
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名児耶:
それで、「そういえば、伊藤さんの商品をなんでKONCENTで取り扱っていないんだろう」
ということに気が付いて。

海外の展示会で会うけれど、
いったいどんな会社で、どんな風にモノ作りをしているんだろうって。
すごい興味を感じて、電話したんですよね。

伊藤バインダリーがある墨田区っていったら、
アッシュコンセプト(台東区蔵前)からは橋越えればすぐの場所だし。
「今から行ってもいいですか?会って話しましょうよ」って。
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伊藤さん:
それが2018年の夏。
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名児耶:
実際に行ってみたら、コンパクトな工場だけれど、シンプルで、きちんと整理されていて。
「良い形に会社を経営しようとしているんだな」って感じました。

何代目でしたっけ?
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伊藤さん:
創業は1938年で、僕が3代目です。
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名児耶:
そこで、これまでの会社の流れとか、製品の話を伺って。
特に、典型プロジェクトというのが、伊藤さんにとっては初めてのオリジナルの商品。
だから心から本当に大事にされているのがわかった。

「でも、伊藤さん。
これから先、伊藤バインダリーとしてはどういう会社にするの?」という話をしてね。
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伊藤さん:
あの時は短い時間で、プロダクトを作ることだけじゃなくて、
経営をどういう風にするかとか、将来の夢は?とか、いろんな濃い話をさせてもらったんです。
そこがすごく印象的でしたね。
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名児耶:
それで、「なんで新製品を作らないの?」て聞いたら、
「今のモノをきちんと作ることが大切です」って。
そこは頑固な職人気質がちゃんとあって。
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伊藤さん:
今までの商品というのは、すべて社内で作っていて、
そこに一生懸命だったんですけれど、
「自社でつくることだけが“ものづくり” ではない」というアドバイスをもらって。

たしかに、いろんなネットワークとか、ノウハウとかを使って
みんなで作れるのなら、そこは自信を持っていいのではないか、ということが
今回の「Notebook」を作る上で、後押しになりました。
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K:
その会社訪問から、どういう経緯で

「Notebookを作る」ということにつながったのでしょうか。
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名児耶:
(ノートを取り出しながら)
このノート を伊藤さんのところで、発見したんですよね。
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*Notebookのきっかけとなったノート

名児耶:
伊藤さんに「なんでこれ売らないの?」って聞いたら、
「アメリカのメーカーからの特注品で。日本では販売はしていないんです」って。

別の製品を海外で販売していたのがきっかけで依頼があったの?
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伊藤さん:
はい。当社はノート製造会社ではないけれども、
輸出ができる製本の専門会社ということを向こうが知ってくれていたんです。
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名児耶:
僕も今まで、いろいろなノートを使ってきているけれど、
そろそろ落ち着いて、自分が一生使っていけるようなノートが欲しい、
なんて話をしていて。

その時に、「オリジナルのノートを考えない?」って、僕がオファーしちゃった。
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伊藤さん:
「実は僕もノート作りたいと思っているんです。でも、デザインを考えられないし。」
「じゃあ、一緒にやろう。」ということで、
すぐに墨田区のものづくりコラボレーション事業の担当の方に連絡してくれたんですよね。
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名児耶:
コラボレーターと事業者が勝手に出会って、勝手に始めている。
でも、ちゃんと許可はとらないとね。

伊藤さんも新しいものを作る時に、いろいろな費用が掛かってくるけれど、
墨田区の人が背中を押してくれたら、動きやすいし。
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伊藤さん:
やはり、新商品を作る時、いち工場だと全て社内でやるというのは、なかなか難しい。
でも、後押しがあると、ちょっと加速できるので、ありがたかったです。
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前篇は、両社の出会いからコラボレーションに至るまでを伺いました。
中篇では、「Notebook」に込めた、想いやこだわり、ものづくり技術についてお聞きします。
*中篇はこちら
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*「Notebook」の製品情報については、こちらからご覧いただけます。